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第44話

朝食を食べ終えてかなちゃんの支度を待っていたが、かなちゃんは用事があるからと朝ごはんも食べずに簡単に身支度を整えると、俺より先に家を出た。 あれ? なんか変だ。 いつもとかなちゃんの様子が違うと違和感を覚えた俺は、慌ててかなちゃんの後を追いかけた。 けれどかなちゃんが乗ったバスには間に合わず、結局、今バス停で次のバスを待っているところなんだけど……。 「おー本郷弟、兄貴は?」 ワイルド系イケメン、神崎先輩現る。 ちょっと長めの髪を後ろに撫でつけて、制服の着崩し方もこなれた感じで、一見チャラい。 でもかなちゃんの護衛係の一人でもある……。これには頭が上がらない。 「はよっす。兄ちゃんは一本前のバスで行きました」 「一緒に乗ってやらなかったのか」 「……?……はぁ」 一緒に乗ってやるってなんで?バスくらい一人で乗れんだろ。 怪訝そうな顔で神崎先輩をじろりと見ると、「あ?」と逆に睨まれた。 え。なんで?……ていうか、その顔怖いんですけど……。 凄みを効かせたその顔は迫力がある。これって俺が怒られてる絵面なんでしょうか……? 「お前知らねぇの?」 「はぁ……?」 「本郷一人で満員電車やバスに乗ると遭うんだよ、100パー」 「え?」 何に遭うというのだろう。お化けか何かか……。 「痴漢に」 「へ!?」 「ばか、お前弟のくせにそんなことも知らなかったのか」 「し、知りませんでした……」 まじか!!まじか!!!! 頭の中が軽くパニックに陥った。 てことは、俺と神崎先輩がこうして喋っている間にも、かなちゃんは痴漢の魔の手に堕ちているかもしれないということか!!! 頭の中の妄想スイッチがオンになる。 どこの馬の骨ともわからない禿げた親父どもに、男にしては丸くてふわんとしたかなちゃんの尻が揉まれたり、あわよくば制服の中に手を突っ込んであんなところや、そんなところを直に触わられたり……!? そんなことが許されるのか!?いや、許されん!!! 嫌がるかなちゃんの顔。やめてくださいって言いたいのに怖くて言えず涙ぐむかなちゃん。その背後から「泣いた顔も可愛いね」なんて言われて、お尻に指突っ込まれたりして……。 ひーーーっ!! 想像して頭を抱えた。 いやいや、妄想している場合じゃない。俺は慌てて携帯を取り出しかなちゃんへメッセージを送った。 『かなちゃん!無事!?変なことされてない?』 返事はすぐに返ってきた。 『え?啓太どうしたの?何もないよ。もうすぐ学校着くよ。今日は先に行っちゃってごめんな。』 俺を気遣う内容文だったことに気が抜ける。 「………大丈夫みたいです」 若干青ざめた表情で言うと、神崎先輩が俺を見て、ぶふっと笑った。 「いやぁ~、心配性の弟くんだねぇ」 ……騙したな、この野郎。

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