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第45話
次のバスが到着して俺と神崎先輩は仕方なく一緒に乗車する。
混み合う車内でばらけて座るのも憚られ、俺は神崎先輩の隣に立ち吊革に掴まった。
俺より少しだけ神崎先輩の方が背が高い。……むかつく。
「何?」
「何って何ですか?」
「いやぁ、俺をじっと見詰めているみたいだから。そんなに俺、カッコいい?」
「……」
んなもん知るか!!!
言葉を失った俺は無言で先輩から目を反らした。
「あの……」
「ん?」
「神崎先輩は、かなちゃんのことどう思ってるんですか」
「どうって……。大切な友達だけど?」
「友達?」
「まぁそうだな。友達っつーか、友達以上に思ってるとこもある」
ん?なんだその濁した言い方は!気になるだろうが!
「友達以上って……あの、言っておきますけど、俺、……ぅわっ」
神崎先輩には負けませんから!と牽制するつもりだった。けれどバスが急ブレーキをかけて急停車し、吊革に掴まってはいたが体が大きく運転席の方へと傾いだ。
引っ張られる体がガシッと何かに支えられ、ぴた、と止まる。
「急停車失礼いたしました」と車内アナウンスが流れた。
「っと、大丈夫か?」
「あ、はい、ありがとうございます……ひっ!」
俺は自分の体勢に驚いた。
神崎先輩の手が俺の腰へ回されて体を支えられていたからだ。
「お前ら兄弟揃ってなんか危なっかしいんだよなぁ」
何なんだこの人は!!優男か!ただの優男なのか!?
「もう大丈夫なので手離してもらえますか」
「あぁ、男のプライドが刺激された?」
そう言って神崎先輩がくくっと笑い、手はするりと離された。……なんだか非常に憎たらしい。
「本郷兄なら素直にありがとうって可愛く言ってくれるんだけど、お前は素直じゃないよな」
「それはどうもすみません」
あれ?この人、かなちゃんに恋愛感情は持っていないのだろうか?
本当に友達としてかなちゃんに接してくれているのか?友達以上というのは、もしかしたら兄弟的な意味?
だったらこの人は、ただ単に誰にでも優しい、いい人……ということになる。
「それはそうと、お前ら血繋がってないんだってな」
「え……あ、はぁ」
ライトにさくっと俺たちの深い部分を突かれた気がした。だけど嫌悪は感じない。
神崎先輩の徳がそう感じさせるのだ、……多分。
「けど、あいつはお前のこと、完全に弟としか思ってないぞ」
「え」
見れば神崎先輩は俺を見てにやにやといやらしい笑みを浮かべている。
前言撤回!この人に徳など……ない。
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