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第48話

昼休み、俺は米本と三年校舎へ向かった。 米本がどうして神崎先輩を紹介してほしかったのかとか、神崎先輩と米本のことには然程興味も湧かず、どうぞ勝手にそっちはそっちでやって下さい……な心境で。 俺はただ、かなちゃんに会えることだけを期待していた。 そりゃあもちろん、同じ家に住んでいるわけだから、会おうと思えばいつだって会える。 だけど今朝のかなちゃんは、なんかいつもと違っていた。 それが何なのか知りたいし、そうさせた原因が俺にあるのなら、ちょっと心当たりもあるし謝りたい。 弟にキスされたり、チンコ扱かれたり。普通じゃないってことくらい自覚はある。 俺のこの愛故のセクハラがもしかなちゃんを苦しめていたとしたら。 けれど何にしろ、諦めるという選択肢は、今の俺にはない。 「あーっ、やばい。俺緊張してきた」 「は?そんな緊張する相手じゃないぞ。っていうか、単刀直入に聞くけど。好きなの?神崎先輩のこと」 「えっ!?」 横に並んで歩いていた米本がびよんと飛び上がった。 分かり易過ぎる……! 「いや別に、偏見とかないから安心しろよ。むしろ応援してやりたいくらいだから」 「いやまだそこまでは言ってないだろ……けど……」 米本の足が止まり、前へと進む俺のブレザーの背中側の裾をくいっと掴まれ俺もまた足を止める。 「内緒にしといて。頼む」 後ろを振り返ると米本は子供みたいな顔を真っ赤にして俯いていた。 弟系キャラ。照れて俯く、の図。……確かに女子がちやほやするのも無理はないかも。無垢な感じがまた可愛らしい。 「まぁ……い」 「そうじゃないと俺にも考えがあるからな」 いいけど。そう言おうとして言葉を遮られた。 「は?考え?」 え?なんで俺脅されたみたいになってんの!? よくわからないけど、こいつの言動は要注意だ。 過去にこいつに告白した女子たちはみんな丁重に(ちょっと困った顔でしゅんと寂しそうに「ごめんね」と言えばOKらしい)断られ、しかし裏では「まじアイツ不細工」「超デブ」「化粧お化け」「口紅が口裂け女」「眉毛がまろ」「脚が大根」などなど一度聞いたら忘れられないようなフレーズで俺たち男友達に毒を吐くような裏表は最早テンプレ。 俺だって雨の日にこいつ傘がないと困っていたから予備の傘を貸してやったらズタボロに折れた状態で「俺は悪くない。悪いのは昨日の風だ」と詫びの一つもなしに返されたことがあった。 強風とてこんなボロ傘になる筈あるまい……とは思ったが、見た目の可愛らしさにこっちも強く出れないことを本人はよくわかっていて。とにかくこいつは見た目に救われている性格ブスな男なのだ。

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