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第49話
何を言われるのだろうと身構えていると、とんでもない爆弾発言が飛び出した。
「本郷さ……お前ホモなんだろ……そうだろ?」
「は……え?えーっ?」
いや、ちょっと待って。
俺はかなちゃんが好きだけど。
そりゃかなちゃんは生物学上男だけれど、別に男全般が好きなわけじゃない。
男が好きって言い方は誤解を招くじゃないか!?しかもここ、上級生が行き交う、3年生のフロアだし!
通る人、通る人が、ちらちらとこちらを見ているの、気付かないか米本ーっ!?
空気読めよ、性格ブス男ーっ!!
「ばらされたくなければ、俺のことも喋るなよ?」
「いや、俺別に男好きじゃないし。かといって、ばらしたりしないけど。でもなんで?」
「だって、この間校庭で体育してる3年男子をずーっと窓から見てたじゃん。気持ち悪いくらい」
「え……。あ!あぁ!あれね!」
かなちゃんの体育の授業だ。
かなちゃん、ハードル走でこけて膝を擦りむいたんだ、あの時。
「あんなに見てたらバれるっつうの。感づいたのが俺で、命拾いしたな本郷」
米本はしてやったりの表情でにやりと笑みを浮かべた。
なんだそのどや顔は。余計なことばかり喋る口を塞いでやりたいと本気で思う。
「確かに見てたけど、兄貴を見てたんだよ。ハードル走でこけたんだ。ちょっと心配になって見てただけ」
「む!?そうなのか……」
やべえ……早とちりした。俺だけ一方的に神崎先輩のことが好きだとこいつに知られてしまった……!!
と、米本の顔に書いてあった。
無意識に俺は眉間にしわを寄せた。
流石に寛大そうな神崎先輩でも、こいつだけは捌けないという事態に陥りそうだな……。
ちょっと面倒くさいかも。
米本に神崎先輩を紹介すると提案した自分に後悔し始めたその時、廊下の向こうから目当ての神崎先輩とかなちゃんが歩いてきた。
かなちゃんの歩く姿、そのシルエットすらどういうわけか可愛らしくて堪らない。
今更戻ることもできないし仕方ない。ここは速攻神崎先輩に米本を押し付けて、かなちゃんを奪ってどこか2人きりになれる場所でお昼を食べることにしよう!
俺がおーいと2人に向かって手を振ると、それに気付いた神崎先輩が手を上げて、かなちゃんも控えめに手を振ってみせた。米本を前に出してやろうと横に目をやるが、米本はそこにおらず、いつの間にか俺の後ろに隠れるようにして立っている。
「おい、米本何してんだよ」
かなちゃんとの時間が惜しい俺は若干イラッとしながら米本に目をやった。
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