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第56話
「ふーん……」
結局かなちゃんと神崎先輩は屋上へ戻ってくることはなかった。
俺はかなちゃんの、あの、悲し気な表情が忘れられず、午後の授業は何も手につかない感じで只々時間の経過をひたすら待った。
帰宅時かなちゃんにメッセージを送ったが、用事があるから先に帰っていいよと返事があったきり、自宅に戻ってからも連絡がくることはなかった。
そして。
ーーーこの日、かなちゃんは帰ってこなかった。
そろそろ夕食の時間かと時計を見れば19時を回っていて、かなちゃんが帰った気配もなくどうしたのだろうと思いながら居間へ下りて行った。すると義母さんが電話で誰かと話していた。
「そうなの?急にお邪魔して神崎君のご家族のご迷惑になってない?大丈夫?……そう?……うん。わかったわ。明日帰ってくるのね。はい、おやすみなさい」
会話の端々からかなちゃんと話しているのがわかって義母さんの声に耳を傾ける。
え……?神崎君?明日帰ってくる?
何が起きたのか瞬時に判断できた。
かなちゃんは神崎先輩の家にいる。そして明日帰ってくるということ。
「かなちゃん……」
目の前が暗くなり、周りの音が聞こえなくなる程、ショックだった。
呆然とただ突っ立っている俺を義母さんが見つけ、すぐに声をかけられた。
「啓太?……啓太?どうしたの?顔色悪いわよ。具合悪いの?」
「あ……いや、大丈夫……」
「そう?あまり大丈夫そうに見えないけど……。夕飯できてるけどどうする?」
「え……と、あー俺ちょっと腹の調子悪くて、少し落ち着いてからもらってもいい?」
「あら、風邪かしら?無理しないでね。あ、そうそう、彼方ね今日お友達のところに泊まるんだって。珍しいわよねぇ」
「そう、なんだ」
泊まるならもっと早く連絡くれればいいのに、と口を尖らせて愚痴を言う義母さんを横目に、俺は二階の自室へと戻った。
ベッドにぼすんと体を投げ出し天井を睨むようにして見詰める。
あの二人に何があったんだろう。
かなちゃんの様子がここ2、3日おかしかったことに加え、今日の屋上での様子も相当変だった。
そして神崎先輩……。
あぁーーーーーーっっっ、もうっ!!!!何が何だか訳がわからん!!
俺は頭をわしゃわしゃと掻き毟る。
こうはっきりしないうじうじした感じは性に合わないし、悩むことだって気力も体力も相当消費する。
悩む事が不得意なだけに持続するのは難しい。
今気になっていることは只一つ!
今頃かなちゃんと神崎先輩は何してんだろう!?
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