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第58話

いつもはおっとりした義母さんでもこうなってしまったら全く融通のきかない頑固者である。 何がどうあったって外には出してくれないだろう。 わかったよ。諦めるよ……。 「ごめんなさい……。夕飯食べます……」 「全くもう。……ところで何かあったの?コンビニなんて嘘でしょ?」 そして目敏く鋭い義母さんは色々とお見通しでありました……。 「まぁ、嘘というか、コンビニの近くに用があったっていうか……」 嘘ではない。 神崎先輩の家は一番近いコンビニの近くだ。 「もしかして、彼方が心配だった?」 「……っ!い、や、別に……」 ぎくり。 嘘、なんで? いや全くその通りなんだけど、なんでわかった? 後頭部から背中にかけてサー……と血が下がるような感覚に襲われた。 かなちゃんに対して余りある程の疚しい気持は溢れんばかりだ。 それを見透かされたのか? 背筋がピンと伸びるような鳥肌がぶわっと立つような、こんな場面を経験することになるなんて。 とにもかくにも、脇に変な汗をかき、ぞっとした。 「そう?さっき彼方から電話あった辺りから啓太の様子がちょっとおかしかったし。なんていうか元気ないなぁって」 「そんなこと、ないよ。余計な心配かけてごめんね。俺ご飯食べる」 俺は平静を装って声が上ずったりしないよう低めに抑える。 「ん~……、まぁいいけど。彼方なら明日の昼前に帰ってくるって言ってたわよ。そんなに彼方に会いたかったの?ほんと、貴方たち仲が良くて羨ましいわ」 ふふんと鼻歌交じりに義母さんは居間へ戻って行った。 いや待って。俺、別にって言ったよな……? やべぇ。やべぇよ!やっべえええっ! 自分の見られちゃいけない部分を覗かれたような気がする。 それがあってはならない禁断の恋と知ってか知らずか。しかも相手は義兄。 どこまで把握しているんだろう。 怖い……気絶しそうだ。気のせいであってほしい……。 ともかく家族に俺の超汚い内側を見せるわけにはいかない。 努めて冷静に、かなちゃんの弟だというスタンスを崩さないように。 今日のことは俺のこれまでの行いを見直すいい機会だ。少し落ち着いて考えよう。 本当は今すぐ会ってかなちゃんの顔が見たい。 けれど今日のところは我慢し諦めるということで、俺はそれを自戒とすることにした。

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