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第62話
拒絶されたことが悲しくて、悔しくて仕方ない。
けれど、自分以外の誰かと、かなちゃんが幸せになることなんて考えたくなかったし、かなちゃんを笑顔に出来るのは自分だけだと、そこだけは譲れないし自負している。
泣いてちゃダメだ!
パンッ!と両手で自分の頬を打ち喝を入れた。
着ていたスウェットの袖で目元をごしっと拭いベッドから抜け出した。
目指すはかなちゃんの部屋。
「かなちゃん!」
扉の前でかなちゃんを呼び、ドアをノックした。
返事はない。
だけどここで言わなきゃいけないことがある。
俺は、かなちゃんが好きだ……!
「入るよ」
返事はないが、今、どうしても伝えなきゃいけないと思った。
ドアは施錠されておらず、かなちゃんの返事も待たずに部屋へ足を踏み入れた。
「かなちゃん……」
かなちゃんはベッドの上に俯せになり、顔を伏せていた。
肩が時折震え、しゃくりあげる息遣いまで聞こえてくる。
泣いているのだ。
自分が涙を堪えていた間、かなちゃんはここで泣いていたのだろう。
俺はベッド脇にしゃがみこみ、出来るだけかなちゃんに近付いた。
心臓がばくばくと音を立て、耳の奥まで鼓動が響く。
こんなに緊張するのはすごく久し振りだった。
子供の頃初めてジェットコースターに乗った時以来かもしれない。
手も微かに震えている。
その震えた手を、かなちゃんの呼吸に合わせて上下している背中へそっと置いた。
俺は息を大きく吸い込み、吐きだすと共に意を込めてその言葉を口にした。
「かなちゃん……、好き、です」
言った途端、かなちゃんの背中がピンと伸びて、緊張で体を固くしているのがわかった。
こっちだって死ぬほど緊張してるけど、かなちゃんからすれば弟に告白される日がくるとはまさか思ってもみなかっただろう。正に青天の霹靂だ。
それでも俺は、言わなきゃ絶対後悔すると思っていた。
このままかなちゃんの弟として過ごすのは、もう無理だとわかってしまったから。
「かなちゃんのこと、恋愛の意味で好きなんだ。米本のことは誤解だよ」
「……」
「俺達、兄弟としてやってきたけど、血は繋がってない。だから、多分余計に惹かれるんだと思う。こんなこと言われたら兄弟やめたくなるだろうけど……。でも俺としては、弟としてじゃなく、一人の男、人間としてかなちゃんに見てほしい」
かなちゃんは動くことなく、じっと俺の話を聞いていた。
どんな顔して聞いているのかわからないけど、きっと、困り果てていることだろう。
かなちゃん、困らせてごめん。
でも、この気持ちを止めることはできないんだ。
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