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第65話

かなちゃんを俺に陥落させる最善の方法を見出す余裕はこれっぽっちもなくて、幼稚で稚拙な愛情表現を押し付けているだけなのはわかっていた。 そして、兄だからこそ、かなちゃんが本気で拒むことができないことも。 そこに付け入る俺は最低だってことも。 ふにゅふにゅしたかなちゃんの唇を甘噛みして、もう一度かぷっと食んでから唇を離す。 「け……た……」 俺の胸にかなちゃんが頬を摺り寄せた。 まるで甘えている猫みたいな仕草だ。 かなちゃん、もう素直になっちゃえよ……。 「かなちゃん……」 「啓太……俺……」 かなちゃんが意を決したように視線を持ち上げた。 「……?」 「お前に隠してることがあって……」 「え?」 え?……何? ここで今言わなきゃならない隠し事? この告白の流れで今言わなくちゃいけないことなんてあるのだろうか。 まさか……、将来を約束した恋人がいたり……しないよね? 「実は……」 ごくっ。 先の言葉が怖くて生唾を飲み込む。 でももう俺は諦めないと決めた。というか諦められないストーカー気質なのだと自覚した。 それはかなちゃんに対してだけかもしれないが。 だから、何を聞いても、俺の恋心が折れることはない筈だ。 「実は……?」 「言ったら……嫌われるかもしれない……」 「????」 ん?何?ほわっつ? 全く意味がわからない……!! かなちゃんという義兄へのしつこいまでの偏愛。これを暴露した俺に嫌われるって、どんなヤバイ秘密を隠してるっていうんだ!? 聞きたいような、聞きたくないような……。 一瞬にして凝り固まった俺をじっと見詰め、かなちゃんが血色の良い赤みを帯びた唇を開いた。 「実は……俺……」

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