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第73話

「お……お願い、します」 言った直後、ゴクリと喉が鳴った。 美味しそうなものを目の前にした時に唾を飲み込む、正にそれは本能的行動。 腹が減っていると例えてもいい。今すぐ食らいつきたい、まるで肉食獣にでもなった気分だ。 俺の顔はハンターさながらの表情で、並ぶように股間の息子もギンギンに臨戦態勢。 きっと今の俺は怖い顔をしているに違いない。 それだけじゃなく、興奮してありえないくらいスケベ丸出しのいやらしい顔もしているだろう。 それなのにかなちゃんは、俺を見てふわっと柔らかく美しく可愛らしく、にこっと微笑むんだ。 あぁ……!天使さま……!! 「ま、マジでいいの……?気持ち悪くない?」 「うん。してみたかったから……。えっと……触るね」 ふおおぉぉぉ……! かなちゃんの両手が俺のそこへ伸びてきて、そっと添えられる。 そこへ口づけるようにかなちゃんの顔が接近し、紅い唇が開いてピンクの舌がちろっと見えた。 ペロペロと舐めるところから始めるのかと思ったら。 ぱくっ! 潔いな!おい!! かなちゃんの唇が俺の先っぽを銜えていた。 そのまま根元近くに手を添えて、顔を上下に動かして、銜え方は浅いけれど口内に擦り付けて口淫してくれた。 「……ぅ、かなちゃん」 手が、自然とかなちゃんの頭を掴む。 決して乱暴なことをするつもりはないのだが、手に力が籠ってしまう。 「ふぅ……ん……」 かなちゃんの小さい口を行き来する俺のものは、視覚から、触覚から刺激されて、いつ弾けてもおかしくない。こんな奇跡みたいな場面、今後いつあるかわからない。少しでもこの感覚を長く味わいたくて、同時にかなちゃんが愛しくて、俺は掴んでいたかなちゃんの頭に自分の顔を寄せた。 鼻先をかなちゃんの髪の中へ埋める。 家のものではないシャンプーの香りと、かなちゃんの汗の匂いがした。 おそらく神崎先輩の家のシャンプーだろう。 俺とこんなことになっているのだから、かなちゃんと神崎先輩はただ純粋に友達なんだろうと思う。 けれどそこでシャワーを借りるなり風呂へ入るなりしたのかと思うと、かなり嫌な気持になった。 「かなちゃん……、もう神崎先輩のところに行ったりしないで……」 「ふぇ……?」 銜えながらだったからか何と返されたのか不明瞭な声だったが、銜えながらも上目遣いで俺を見て、ふにゃと笑ってみせる。 兄の顔だった。 兄であり、俺の大好きな愛しい人であり。 相変わらず口に含まれている部分は先端から半分までの浅い部分だけだったが、はみ出た茎はかなちゃんの手で扱かれた。 「かなちゃん、かなちゃん……にいちゃん……」 温かく優しい手と口に導かれ、俺は背徳的な倒錯に酔いしれながら達したのだった。

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