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第77話
「かなちゃん」
「ん?」
「かなちゃんのお尻、他の誰にも見せないでね。もちろん神崎先輩にも」
「うん……。もちろん、啓太以外に見せる予定はないけど……」
「俺が開発するんだから」
「も、もうっ、啓太の顔、なんかやらしいよ」
かなちゃんが両手で顔を隠すように覆った。
そんな仕草も可愛くて、俺は掴んでいたかなちゃんの肩を自分の胸に引き寄せ抱きしめた。
もう堪らない!
「そりゃ、かなちゃんに欲情してるから……エロい顔にもなるよ」
「うん……」
本当はカッコいい事言ってかなちゃんをぎゅっと抱き締めて、エロい大人なキスをして「好きだよ」と愛を囁きたかった。
現実には鼻血を止めるためとは言えど、鼻に丸めたティッシュを突っ込みトレーナを血で汚し、エロ親父顔負けな顔でかなちゃんに尻を誰にも見せるなと言っているわけだけれど、かなちゃんへの愛は本物だ。
「啓太、大好き」
かなちゃんが俺を見上げてふにゃ、と笑う。
兄であり、家族であり、それ以上に恋してしまったこの義兄を見て、目頭がじんわり熱くなった。
「俺も。かなちゃん、好き、大好き」
俺とかなちゃんはお互いの体温を確かめ合うようにぴったりと抱き合って、ゆっくり唇を重ね、ちゅっと音をたてながら甘いキスを交わした。
信じらんない。マジ信じらんない。嬉しい!嬉しすぎる!!
「うん。じゃあ啓太、今後のことだけど、俺、高校卒業後は地元を出ようと思う。そうすれば啓太と二人で暮らせるでしょ」
「え。どういうこと……。家を出るってこと?」
じーんと感動の余韻に浸っていたがかなちゃんの言葉で一気に現実へと引き戻された。
「うん。元々行きたい大学が地元になかったっていうのもあるんだけど。だから出来れば啓太も、俺についてきて欲しいなって。でも進路は人に言われて決めることじゃないし、無理だったらお互い卒業するまで遠恋になっちゃうのかもしれないけど、俺は待つよ」
何。何なの。かなちゃん。
急に男前な発言!?いや、男前っていうか……。
「かなちゃん……」
かなちゃんはやっぱり兄ちゃんなんだなって思い知らされる。
「本当は啓太と一緒に暮らしたい。ずっと一緒に居たいけど、学費は親が出してくれるし、それに甘える以上は俺達も本気で先のこと考えなくちゃな」
「うん……」
かなちゃんの手が子供をあやすように俺の頭を撫でる。
俺もかなちゃんの言ってることは理解出来るし親の期待にも応えられるのなら応えたい。
現実はいばらの道なのかもしれない。
いやしかし、かなちゃん。
かなちゃんは俺をわかってない。
俺の人生はかなちゃん無しに生きていけないと言うことを。
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