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第80話

かなちゃんを見送った後、俺は父さんとラーメン屋でネギラーメン大盛りと餃子を食べた。 父さんは餃子、野菜炒めをつまみにビールを飲んでいる。真昼間から酔っぱらうつもりだろうか。 ……うざい。 「ああっ。子供を嫁に出すってこんな気持ちなのか!?」 「いや、かなちゃん嫁行ってねーし。そもそも誰かの嫁じゃねーし……」 父さんの行ってることも少し理解できる。 今までずっと一緒に暮らしてきたかなちゃんが、家から出て行ったのだ。 寂しくない筈がない。 しかしかなちゃんは俺の嫁だ……!! 「けどまぁ、男の一人暮らしってのは経験しといた方がいい」 「なんで?」 「実家育ちの男って奴は甘ったれで家事の一つもできやしない。その点、一人暮らしの経験があるやつは、料理は出来るし掃除洗濯だってお手の物だ。今時それくらいできなきゃなぁ」 「そういうもん?」 「そうだぞ。父さんの離婚原因はそれだ。共働きで体力的に大変だった母さんを手伝いもしなかった。だから父さんは捨てられたんだ。当時は、そんな理屈が通る筈ない。家事育児は母親の仕事だ……って思いこんでいたんだからな。今思えば捨てられたのは自業自得だったんだろうな」 「ふうん……。父さん最低だったんだな」 「お前さらっとひどいこと言うなぁ」 「父さんはじゃあ一人暮らししたことなかったんだ?」 「あぁ。実家は楽だったなぁ。家賃はないし、飯は出てくる。掃除洗濯だってお袋がやってくれるんだ。しかしそれがダメな男を作り上げる。だから啓太、がさつなお前は特に一人暮らしした方がいいだろうな」 「……わかった」 俺は父さんの話を話半分に聞き、想像する。 俺が進学するのはかなちゃんの大学とそう離れていない大学か専門学校。 そして俺が住む場所は、かなちゃんと同じアパート、同じ部屋だ。 朝はかなちゃんをキスで起こし、時には朝勃ちに託けてそのままエッチな流れを作りハメて刺激的に起こすのもいい。 「やっ、けいたっ、朝からこんな、あっ、あッ、あぁんッ」 「ほらかなちゃん、ちゃんと自分で脚抱えて。もっと広げないとちゃんと奥まで入れられないよ」 「いやっ……、そんな意地悪、いわないで……っ」 「そうそう上手。ここがいい?それともこっち?」 寝ぼけ眼のかなちゃんがとろとろになって脚を大きく掲げ、俺のマグナムで乱れている姿を想像した。 朝からこんな始まりかたも悪くない。 昼は学校。 学校の帰りにスーパーに寄ってかなちゃんの好きなものを買う。 かなちゃんは細いから何か精のつくものを食べさせたい。 女の子よりはもちろんカッチリしてるけど、男としてはかなりふにゃっとしていて頼りない。 もう少し筋肉をつけた方がいいと思うんだ。 ……筋肉つけるには何をたべさせればいいんだろう? まぁいい。 夜は俺が食事を作ってかなちゃんの口元に運ぶんだ。 「けいた、こんなの恥ずかしい。俺一人で食べれるし」 「恥ずかしがってるかなちゃん可愛い」 赤面するピンクの赤ちゃんみたいな肌をするっと撫でて愛でたりしたい。 「明日の朝はかなちゃんのお肌がもっとすべすべになるように頑張って朝ごはん作るからね」 ……肌にいい食べ物ってなに? かなちゃん機械工学を学ぶって言ってたからきっと目を酷使するだろう。 だとしたら目の疲労を取る食べ物とか準備すればいいのだろうか? だめだ、知らないことが多すぎる。 これじゃかなちゃんにご飯も作ってあげられない……!! 「……父さん、俺、やりたいこと見つかった」 俺はどうやらかなちゃんのお世話がしたいみたいだ。 「そうか。お前のガタイと運動神経なら体育大学とか進めたいところだがな。体育教師なんてカッコよくないか?ははは」 「体育大学?体育大学で料理とか教えてくれるのか?」 「ん?料理?なんだお前、料理人にでもなりたいのか?」 「うん(かなちゃん専属の)」 「……そうかぁ。人は見かけによらないもんだなぁ。まぁやりたいことをやりなさい。父さんも母さんも応援しているよ」 「ほんと?ありがとう!」 体育大学がどうとか言うからてっきり反対されるのかと思った。正直ほっとして胸を撫で下ろす。 思ったよりも父さんは寛大な人で安心した。今時男子は家事もできなきゃダメだと言っていただけのことはある。 よーし!かなちゃん、待ってて。待っててね!!! こうして俺のごく近い未来が具体的に見えてきたのである。

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