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第81話

進路を明確にした俺はその後の1年、バイトにバイトを重ね、少しでも進学先での金銭的な負担が少なくなるように、同時に自分の強い意志を両親に示そうとしゃかりきになって学業とアルバイトを両立させた。 俺が料理の専門学校に行くことを知ったクラスメイト達は皆一様に驚いた顔をしていたが、それも束の間、店を出したら食いに行ってやるからな!と温かい励ましの言葉までもらうことができた。 しかし店を出す予定などないし、俺はかなちゃんの為に料理を学びたい。 人間体が資本。かなちゃんとの明るい未来は健康的な肉体から生まれるのだ。 かなちゃんは大学とコンビニのバイトが忙しかったらしく、正月に帰省はしたものの2泊しただけでまたアパートへと戻ってしまった。 久し振りに見たかなちゃんは、相変わらず線の細い頼りない体つきで、そのくせ表情だけは以前より大人っぽくなっていて、その危ういアンバランスさに、いつ俺が鼻血を噴いてもおかしくないほどのエロスを身につけたようだった。 いつキスしよう。いつかなちゃんを抱き締めて愛撫しよう。 正月特番の隠し芸を見ながらそんなことばかり考えた。 けれど、実家だわ両親もいるわで、現実にはエロいことなどこれっぽっちもできなかった。 同じベッド、同じ布団で一緒に寝るのも不自然だろう。 あと少し、あと少しで一緒に暮らせる。 自分にそう言い聞かせ、なけなしの理性をかき集め、俺は悶々とした正月を過ごしたのである。 かなちゃんの帰省最終日、ファミレスでのバイトが入ってしまい、俺とかなちゃんはまたそこでしばしの別れを迎えることとなった。 バイトへ向かう直前、かなちゃんが俺の耳元で、「啓太のウェイター姿、かっこいいだろうな」と、そう囁いた。 それはそれは可愛い天使の顔で。 俺、それだけで、どこまでも頑張れる……!! かなちゃんを見ると、潤んだ丸い目でうっすら頬を上気させ、血色のいい赤みを帯びた唇が、俺を誘っているようだった。 かなちゃん、エロい目でしか見れなくてごめん! かなちゃんをそういう風に見てしまう俺を許して。 頭の中でゴメンを繰り返し、俺はもうすぐいなくなるかなちゃんを置いて、泣く泣く自宅を後にしたのだった。

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