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第29話
莉羽の匂い。
そんな言葉が優里の口から出てきて龍は焦った。
莉羽と一夜を共にした事がバレてるかも(ただ添い寝しただけ)と言うのと何よりこの人の犬並みの嗅覚に恐ろしさを覚えた。
「り、莉羽の匂い?」
「う~ん……まぁいいや。
言っとくけど莉羽は俺のだから。」
「…………っ」
「な~んて……ね」
彼はそう言って龍を睨むがすぐにニッと冗談だって笑う。
だが"俺のだから"と言うのが本音だろう。
ほんとにこの人は莉羽と何かあるんだ。
だとしたら昴も?
龍は思いきって探りを入れる事にした。
「優里さんは莉羽をどう思いますか?」
そう聞く自分の心臓がバクバク言っているのが分かる。
彼がどう答えるのか予想がつかないから怖い。
「………莉羽、ねぇ……
可愛いよあの子。
綺麗だけど我が儘で子供でけど放って置けないし何より相性いいし。」
「え、あ、相性……?」
相性とは何が?
まさかとは思うがその相性なのか?
混乱する龍に優里はニッコリ笑って更に爆弾発言をする。
「ってことは四角関係か。
昴も手出してるし。」
「………っ」
流石に言葉を失ってしまった。
まさかあの莉羽がこんなことになっているとは。
「しょうがないよなぁ。
莉羽って誰にでもホイホイ絆されちゃうし。
まぁそれを分かっててその魔性君に手を出すんだけどね。」
「はぁ……」
諦めたように天を仰ぐ優里。
「あと昴、な~にちゃっかり聞いてんのさ!!」
「えっ!!」
優里の発言に後ろを振り返るとそこには昴が廊下の角に隠れていた。
「聞いてたんじゃない。
聞こえたんだ。」
「またまた~」
「別に俺はライバルが増えようが莉羽への愛は変わらないから関係のない話だしな。」
「あはは強がっちゃって。
ほんと性格悪いよな~」
なんか物凄く面倒な事になってしまったと気が重くなる。
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