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第30話

「お疲れッス一真さん。」 「龍君、お疲れ。」 龍が挨拶する彼は田辺一真、この世界で働いてもう10年近くなる。 もう30にもなるのにまだこんなことをやっているのかと親には呆れられているがそれでも続ける理由がある。 「おう一真。」 「皇さんお疲れ様です。」 ここの店長五十鈴皇一、現役の頃は皇の源氏名で働いていたから彼を皇さんと今でも呼んでいる。 一真がここにきたばかりの頃、皇一は既にNo.1のホストだった。 モデルではないかと言うようなここでは群を抜いてカッコいい容姿に加えて女性の扱いが器用で優しくたまに抜けた所があるのが母性を擽るようだ。 それに優しいのは客だけにではない。 「おい、お前一真つったか?」 「はい。」 「大変とは思うがまぁ頑張れ。」 頑張れの言葉と共にはいっと胃薬を渡してきた。 「あ、ありがとうございます!!」 こんなこともあっていつしか彼に好意を抱くようになった。 それと最近離婚したらしい。 しかも奥さんだった人との間に出来た子供を引き取ったそうだシングルで子供を育てるらしく 凄く大変そうだ。 一真の入る隙なんてないくらいに。 それでも彼が好きでいつか告白出来ればと思っていた。 しかしそれから数年がたったころ皇さんから同じシングルで子持ちの女性と付き合ってると言われた。 ショックだった…… それに追い打ちをかけるようにこんなことを言った。 「え、結婚?」 「ああ、莉羽が良ければそれも考えてる。」 「そう……ですか……」 流石にそれには立ち直れそうになかった。 皇一は莉羽君と相手の親子が慣れるためにと同棲も始めたらしい。 それでも好きと言う気持ちを諦められないでいたがもう付き合える見込みはないとそろそろ見切りをつけなければいけないと思っていた矢先の事だった。 「え、別れたんですか!?」 「ああ……どうも相手と莉羽が上手くいかなくて、色々もめてな。」 これは最大のチャンスが回ってきたのではと思った。

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