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第127話 バーチャル課長の憂鬱
午後は眠気との戦いだ。出勤してたってそれは変わらないけれど、在宅勤務の増えた今はますます痛感する。通勤時間がゼロになった分、睡眠時間が増えたかと言えばそんなことはない。むしろ減った。すぐそこにベッドがあると思うと安心して、つい夜中までオンライン飲み会に興じてしまったりして。
とはいえ無駄な会議は減ったし、集中したい時にくだらない電話で中断されることもなくなった。リモートワークで失ったものなどほとんどないと思う。
あるとしたら、まずは体力。たまに簡単な筋トレとストレッチはしているけど効果があるのか定かではない。
もうひとつは、課長に会えないこと。これが大きい。たるんできた腹回りよりもよほど深刻な問題だ。
「そろそろいいですか、そっち行っても」
「ダメだって言ってるだろ」
一年がかりで口説き落として、やっとOKをもらったのがホワイトデー。それから間もなく職場は出勤自粛となり、在宅勤務が主になった。
それまでに課長と二人きりでできたことはデートが2回、キスが3回。最初のデートの時にきちんと告白をして、キスをした。嫌がられはしなかったから、大いに期待しながら漕ぎ着けた2度目のデート。そこで正式に交際OKの返事をもらって、2度目のキス。デートの回数よりキスが1回多いのは、会社の資料室で目を盗んでキスしたから。この3度目のキスは会社でそんなことするなとめちゃくちゃ怒られた。さすが上司。で、そのまま在宅勤務に突入……。お互い週に2、3日は出勤もするんだけれど、俺が今大きめのプロジェクトのリーダーを任されている関係で、あえて課長とは出勤日をずらすように言われている。責任者不在の日を作らないという意味だ。そのせいで全然会えやしない。
「淋しくないんですか」
俺は画面の向こうの課長に訴える。
「お試し期間が延長になっただけだ。どこでもそうだろう、この騒ぎで、チケットや会員権の有効期限も延長しているところがほとんどだ」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ。お試し期間ってなんですか」
「だから、君とつきあっていけるかどうか」
「えっ、それはもう、あれでしょ、正式でしょ。本契約締結済みでしょ?」
「仮契約だろ」
「いやいや、俺、言ったじゃないですか。恋人としてつきあってください、って。そしたら課長、ハイ、って」
「僕でいいのか?と言った」
「いいですって言ったじゃないですか」
「もっとお互いを知る必要があるね、とも」
「だから、つきあうんでしょ? つきあって、知っていくわけでしょ?」
「……まあ、そうだけど」
「なんなんですか、この期に及んで仮契約とか試用期間とか。まさか、在宅になって一人で落ち着いて考えてみたら、俺のことなんかどうでもよくなっちゃったんですか」
「……逆だよ」
「はい?」
「君が……そろそろ冷めるんじゃないかと。君は職場の上司としての僕を良いと思ってたんだろう? でも、実際はこんなで」
課長は背後に目をやる。正確な仕事ぶりからは想像つかないような散らかった部屋。WEB会議の時はバーチャル背景でごまかしてるけど、その機能を教えたのは俺で、俺だけが知っている課長の真実。「どうしよう、この部屋見せたくないんだけど、背景ってどうやって変えたらいいんだ?」と泣きついて来たときの、前髪をおろしてラフな服を着た課長は衝撃的に可愛かった。
ああ、そうか。だから嫌がるのか。あの部屋に俺を入れることを。今更なのに。
「それ見てますます好きになりましたよ。課長だって俺しか頼れないんでしょ? あーもう、今夜、絶対行きますからね。俺、絶対引いたりしないですから。そしたら、俺があなたのことめちゃくちゃ好きってこと、そろそろ認めてくれますか」
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古池十和さんには「午後は眠気との戦いだ」で始まり、「そろそろ認めてくれますか」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば11ツイート(1540字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
https://shindanmaker.com/801664
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