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第130話 left-handed
あの日もこんなふうだった。
部活後に繰り出す馴染みの中華屋は、威勢よくラーメン!と言えば自動的に大盛りにしてくれる。
一年の時から抜群に巧かった君は、いつも監督の近くに呼びつけられていたから、万年補欠の俺とでは座る席だって遠かったけど、その分、遠慮なく君を見つめることができた。
唯一の例外は最後の練習日、その日だけは三年はずらりと横並びで、俺は君の隣になった。
左利きの君の腕がちょいちょい俺の右手に当たる。
「悪ぃ、気を付けてんだけどさ」
「いいって、それより黄金のサウスポーを傷つけないか心配だよ」
「左利きが役に立ったの、これぐらいだもんな」
部活推薦の話だってきてたのに、君はもう続ける気はないと言って家業を継ぐことになっていた。
俺は君の二の腕に触る。こんなチャンスは二度とないと思った。
「本当に続けないのか? もったいねーな、このすっげえ筋肉」
そう言うと、君は俺の手に自分の右手を重ね、小声で言った。
「こんなのでよければ、いつでも触らせてやるけど?」
あの時、焦って手を振り払ったりしなければ、何かが変わっていたのだろうか。
今日、久しぶりに部活の仲間と会う。
一次会は居酒屋で、二次会はやっぱりここだろうって、あの中華屋に来た。
「とりあえずビール!」
幹事の威勢はいいが、俺たちはもう大盛りのラーメンは食べられそうにない。
君は当たり前のように俺の隣に座ったけれど、その左手が俺に当たることはなかった。そうして気付く。あんなに当たるほうが不自然ではなかったか。監督や先輩だって左隣に座ることはあっただろうに。
でも、手遅れだ。その薬指に光る指輪を見てしまった。
俺にはもう想いを伝える術はなかった。
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古池十和さんには「あの日もこんなふうだった」で始まり、「想いを伝える術はなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
https://shindanmaker.com/801664
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