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第137話 Stay Beautiful ( for 川中めぐ様)
久しぶりに圭の部屋で過ごす休日。と言っても平日の今日、休みなのは接客業の俺だけ。圭はリモートワークなのだとか。仕事だから仕方がないけれど、うっかりオンラインチャットの画面に映り込んだらまずいと部屋の端と端とに分かれて座らされる。これもソーシャルディスタンス? いやいや、こんな時ぐらい密でもいいと思うんだけど。
やがて定時になったらしく、ようやく圭がノートパソコンを閉じる。さあ、いよいよ密に……と思いきや、圭は俺に背中を向けてキッチンに立ち、豆を挽き始めた。俺好みの豆は、いつの間に準備していたのか。
「圭、最近ちっとも店に顔出さなくない? メーカー乗り換えちゃうよ? そうだ、この間挨拶に来たメーカーの南米ワイン、なかなかよくて」
長い「待て」に苛立ちを隠せない俺の言葉に被せるように、圭が言う。
「うちは対面の得意先回りはしばらく自粛なんだってば。そう言ったよね」
「せっかくの商機なのに? 在宅の人が増えて家飲みが増えてるってニュースでも取り上げられてたし、実際アルコール部門の売り上げは好調」
圭はコーヒーミルのハンドルを回す手を止めると、くるりと振り向いて、俺を見つめた。
「家飲みは飲みすぎる危険性も高いんだよ。せいぜい気を付けて」
「ふうん、俺の心配してくれてるの?」
図星だったようで、またすぐに背を向ける圭。こんな時の表情なら見えなくても想像できる。頬を赤く染めて、恥ずかしがってるに違いないんだ。
「けーいー」間延びした声で彼を呼び、背後から抱き締める。ビクッとして、恐る恐る振り返るその顔は、案の定、赤い。「顔、真っ赤。圭こそ飲み過ぎたんじゃない?」酒どころかコーヒーだってまだ淹れてる最中で、何も飲んじゃいないけど。
圭は後ろから回した俺の腕に、自分の手を重ねてきた。
「……そうだとしたら、徹が介抱してくれる?」
伏し目がちにそんなことを言う。
やばい、俺のほうが先に酔っぱらってしまいそうだ。
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*iqイケそな正解者景品作品
川中めぐさんの「徹くん」と「圭さん」のイラストにつけたショートストーリーです。
是非イラストと共に読んでいただきたいです。
https://fujossy.jp/notes/23112/
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