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第3話

   「波留、砂糖は?一個でいい?あれ?一枚じゃない?なんだ……」  カフェで向かい合って座った。暖かい日差しの中で幸せな気分になっていた。  「それでも通じるけど、スプーンで砂糖を入れるときは、一杯二杯と数えるかな」    くすくすと波留が笑う。    「いっぱい?沢山と同じやつだ!ああ、数え方難しいよね」  「そんなに上手なのにね、まだまだ覚えることがあるんだね。僕の英語なんて小学生レベルだ」  「それじゃあ、ずいぶん話せる!小学生は結構話すよね」  波留は目を丸くして驚いた。そして少し困った顔をして答えてくれた。自分は英語が話せないということ。小学生並みというのは「モノノタトエ」だと。少しだけわかったようなわからないような気がした。  「英語教えてあげようか?」  なんでそんなこと言いだしたのかわからない、誰もがすぐ英語教えてと聞いてくるけれど、いつも断ってきた。自分から人にこんなことを言う日が来るとは思わなかった。    「ええ?英語?うーん、どうしようかな。僕には合わないような気がしている」  断られてしまった。断わられた、この僕が!?自分から申し出て、断られたのだ。悔しいと思った時にはなぜか違うことを口走っていた。  「波留って恋人いるの?」  「え、恋人!?いないよ、いるように見える?」  かわいいからね。本当に天使みたいに可愛いから、いないようには見えなかったよね。  「そうなんだ。ねえ、俺に付き合ってよ」  自分で自分の言った言葉に驚いた。何言ってしまったんだろうという驚き。波留はなんと答えるのだろう。  「良いですよ」  ええっ⁉︎そんなに簡単にいきなりOK?って本当にどういうことだろう。  「どこへですか?」  俺はもしかして間違えてしまったのだろうか。「てにをは」を間違うと意味が通じません。確かにそう先生に言われた。「俺に付き合って」違う「俺と付き合って」だ。  いやいや、それでもこの状況でこの流れて間違うのだろうか?連も匠も英語が通じるから、何かあれば英語で話せばいいと思ってきた。けれどこれからはそうはいかない、まずは波留とお近づきになりたい。  「あ、いや。まあ……良いか。夕飯の買い物に行こうかと思ってたから一緒に行く?」  「夕飯?自分で作るんですか?すごいですね」  「一人で食べるのはつまらないから良かったら一緒にどうぞ」  「本当に?嬉しいです。外食多くて飽きてたんです!」  まあ、大学生の一人暮らしなんてそんなものだろう。波留は同じ一年なのかな。いつから一人暮らししているのかな。  けれど随分幼く見える。高校生?いや中学生でも通るかも。一緒に歩きながら時々波留が小走りになるのがわかる。歩幅も随分違うみたいだ。  にこにこして波留が話しかけてくる、蓮と同じ笑い方だ、子どもみたいだ。でも、ここにいるのは波留なんだ。  「ザックさんはもうサークルとか決めました?」  「まだだけど……そのザックさんっての止めてくれない?自分の名前に「さん」ってつくの変な感じがして。ザックで良いから、俺も波留って呼ばせてもらっているし」  「もちろんです、じゃあザック、バスケやりませんか?」  自慢じゃ無いがバスケには自信がある。アメリカではバスケ部はアメフトくらい花形だ、やらないはずが無いだろう。

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