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第4話

「みなさん、今日は新しい仲間を連れてきました。こちらが新入部員のザッカリー ヘイワード君です。僕はザックと呼んでます。中高バスケ部でフォワードだったそうです、足も本当に速いよ。見かけはこうだけれど、日本語もペラペラだから安心して」  波留にそう紹介された。見かけはこうだけどって……他に言い方無いのかな。その時に一人の上級生が言った台詞にびっくりした。  「波留ちゃん先輩、さすがですね!即戦力を勧誘してきたんですねえ」  波留ちゃん……?先輩っ?  ……えっ?って事は……波留は?  「僕ももうあまり大学も来なくなるし、三年の部長にこれからは頑張ってもらうよ。時間のある時にはまた練習にも参加させてもらうけれどね」  えっと、ちょっと待って。それって波留は大学四年生ということになる。同じ年齢だとばかり思っていたのに。  「波留、ごめん今更だけど……何歳なの?」  「え、来月で22歳だよ」  にこにこしてそう答える波留を見ながら頭が痛くなった。同じ歳だとばっかり思っていたのに。  まあ百歩譲って年齢は関係無いとしよう。けれど、これから時間をかけて距離を縮めてみたいと思った相手なのに、ほとんど練習も来ないなんて。  「じゃあ、今日は歓迎会って事で」  嬉しそうに笑いながら言う、背の高い上級生に他のメンバーが「おお、良いねえ」と、答える。  ざわざわとみんなが立ち上がる。歓迎会って理由で多分、飲みたいだけなのだろうけれど、大学生になってからつまらないことしか無い俺には楽しい時間だった。  いきなり先輩や仲間ができたような気がする、これも波留のおかげだな。  もしかしたら波留が俺にとっての春なのかな。そう思いながら楽しそうにお酒を飲む波留を見ていた。突然、くるりと俺の方を振り向くと、波留がにへっと笑った。    可愛いな。  「ザック……あの、さぁ……」  「ん?波留?どうしたの?」  「んふふ」と、波留が笑う。  「やべっ、波留ちゃん先輩が酔っ払ってるぞ」  波留の右隣で飲んでいたやつが慌てて立ち上がって移動した。次の瞬間、俺は頭をがっしりとつかまれ、波留になぜかキスされていた。  笑い声が聞こえた、俺は笑い声の渦の中で身動き取れずになぜか波留にキスされていた。

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