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第6話
忙しいのか、忙しく無いのかよくわからない日々が続く。やるべきことに後押しされて日々が過ぎていく。バスケは楽しいし、友達もたくさんできた。
時折、キャンパスで波留を見かける。波留が気がつく前にその場を離れるようにしている。バスケの練習も波留が来るかもしれないから水曜日は行かない。金曜日にだけ行く。会いたく無い、それが正直な気持ち。
今日は波留が大学のカフェテリアにいたのを見かけた、避けるわけじゃないれど、今日はあの喫茶店でお昼を済ませようと思った。
奥の席に体を沈めて座るとコーヒーとサンドイッチを頼む。
……今日は疲れたなと目を瞑ると波留の笑顔がなぜか浮かんできた。蓮より最近は波留の笑顔が欲しいと思っている自分に驚いている。
あれだけ蓮を手に入れたくて苦しんだのに。蓮への思いが薄くなるのが怖くて仕方ない。友達や家庭のことで一番つらい時期に、俺を人としてしっかりとつなぎとめてくれた蓮への思いを捨てる事は、罪だと思う自分がいる。
運ばれてきたコーヒーに手を伸ばした時に、後ろからガシッと肩を掴まれた。驚いてコーヒーを足の上に落としそうになった。
"Oh, damn!"
つい大きな声が出てしまった。
「あ、ザック、ごめん!」
振り返ると会いたくて、会いたくない波留がそこにいた。
「波留?何してるの?」
「政宗から聞いた、ザックに無理やりキスして怒らせたって。本当に見かけて声をかけようとするとすぐに見失うし、謝りたくても金曜日はバイトだから練習も行けないし、水曜日来ないのは避けてるからだよね。本当にごめんなさい」
「いや、えっと……違うから。肩痛いから放してもらえる?」
「逃げない?本当に?ちゃんと話させてくれる?」
「怒ってもいないし、逃げもしません。この席から立ち上がりさえしないから、大丈夫。とりあえず、そこ座って」
空いている向かいの席を指差す。
「わかった」
まあ、今まで逃げてきたわけだけれども、それでもきちんと話をしなくてはいけないのは解っていた。
「ああ、良かった。もうザックが口聞いてくれないかと思ってた。本当にごめん。最近は飲み過ぎないように気をつけてたんだけど、あの時楽しくてつい……本当に悪かったと思ってる」
「いいえ、俺も悪かったなって。別に怒っていたわけじゃなくて、ただ……」
「ただ?何?ザック?」
「ただ……会うのが辛かっただけで」
「どうして俺に会うのが辛いわけ?俺、何かした?」
「何かね?うん、何もしてないよね。今から少し時間もらえる?二人きりで話がしたいんだけど」
「俺のアパートに来る?すぐ近くなんだけれど」
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