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第7話

 「ザック、本当にコーヒーとサンドイッチは良かったの?」  いやいや、飯食ってる場合じゃ無い、あの状況では。波留の部屋だ、波留の匂いがする。  「うん、せっかく作ってくれたお店の人には申し訳ないけれど、波留と話す方が今は大切」  勢いで来てしまったけれど、俺はどうするつもりなんだろう。そもそも波留には彼氏がいるはず、けれどきちんと失恋しておかないと後々重症になるのはもう経験済み。  「波留、いつも誰にでもキスするって言ってたけれど本当なの?」  「言い辛いんだけれど、その……実際の被害にあったのはザックだけなんだけれど……」  「えっ!?俺だけってどういう意味?」  「いや、その、キスしようって迫るらしいんだけど、いつもみんな知っているからその場から逃げて。でも今回は何も言わずにいきなりザックの頭を押さえつけてキスしたってんだと言われて、俺自身もびっくりしてて」  ええっ?誰ともキスしたことがないってことになる?じゃあ、あのマサムネは?  「マサムネって人は……?」  「政宗?ああ、あいつは高校からの腐れ縁。バスケ部でずっと一緒だったけど、政宗がどうかしたの?」  「単なる友達って事?恋人じゃないって事?」  「なんで、僕が政宗なんかと!ってか、政宗は女じゃないよ?」  いやいや、それくらいわかります。あの背の高さて、あの体格で女って言われても驚くから。波留は日本語をちゃんとやり直した方がいいかもしれない。  「絶対、波留はあの人と付き合ってるんだと思っていた」  「そもそも、僕は年齢イコール恋人いない歴だしね」  「え、ちょっと待って。それって……あれが波留のファーストキスって事?」  「あ、あれっ?ああ、そうだ。そうなるんだ、僕……何も覚えてないんだけれど」

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