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第8話
「まさか……覚えてない…の?」
「ごめん、政宗に笑い話じゃ済まないだろうがって怒られて。本当に僕も驚いていて」
「嬉しいんだけど……どうしたらいい?波留」
波留は俺が何を言っているのか理解できず、頭を少し傾けた。俺が何を喜んでいるのかわからないんだろうな。思わず抱きしめてしまった、小さい。優しく扱わないと壊れそうだ。
「波留、好きだよ」
今までの避けてきた、答えが自ずから出てしまった。
「ん?僕もザックの事は好きだよ」
「その好きじゃないけどね。まあ良いか、手始めにキスやり直さない?」
「えっ?ええっ?」
目をまん丸くして驚くその姿は子鹿みたいだ。
そのまま逃げられないようにしっかり囲い込んで唇を重ねた。いきなり呼吸を塞がれて、波留があふあふとする、年上なのにこの可愛い反応はなしだろうと思う。
波留のぎゅっと結んだ唇がもどかしい。
「波留、そんなにきつく口閉じてたら舌入れらんない」
大人しくキスさせてくれた波留もさすがに驚いて、身体を突っぱねて逃げようとする。ここで逃してはやらない、分かっている波留は絶対に押しに弱い。
「なっ、何?!離して!」
体格差が違う、じたばたしても囲った腕の中からは逃げられないはず。
「多分、一目惚れなんだと思う。もう気持ちが止まらない。好き、俺と付き合ってよ」
真剣に訴えると波留の身体からは力が抜けた。少し困った顔をしている。それもそうだ、いきなり後輩から、それも男から告白されているのだから。
「ザック…あの、付き合うって、また買い物とかじゃなくて?」
いや、実際にはあの時も買い物に誘ったわけじゃなかったし。
「違う、俺の恋人になってって事だよ」
「こ、恋人って?え?男だけれど、僕もザックも?」
「ねえ、波留は俺の事嫌い?」
「嫌いじゃない」
「じゃあとりあえずOkayってことで、お試しだからね」
「えっ、ええ??」
「よろしくね、波留」
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