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第9話
とりあえず押し切って、なんとか付き合うという結果に丸め込んだものの。正直、今は中学生以下の恋愛関係に甘んじている。
波留と約束はした、確かにした。波留の気持ちが追いつくまでは絶対に手は出さないと。
恋愛が何なのかわからない、自分の気持ちもわからないと波留は言う。そんな波留を押し倒すのは、俺の望んでいることじゃない。心の伴いわない、関係を望んでいるわけじゃないからだ。そうじゃない、そうじゃないけれど……俺だって十八歳、とても冷静になれない瞬間もある。理性が常に勝つかと聞かれれば、怪しいところ。
バイトと卒論で忙しそうな波留の為にアパートに行って食事の支度をする。何を作っても喜んで食べてくれる。けれども夜には自宅へと帰る。それは仕方ない、俺が一晩一緒にいるのは無理だから、
その日は土曜日で二人で一緒に出掛けようと話していたら携帯電話がなった。珍しく蓮から連絡があった。
『ザック?最近来ないからどうしてるかなと思って心配してたんだけれど、元気にしてる?
今日、川原でバーベキューをするからザックも呼べばって匠さんが言ってくれたから』
そう言われれば、波留と付き合いだしてから一度も二人のところへは行っていない。恋人を連れていくと伝えると、蓮が嬉しそうに『よかった、待っているから』と答えてくれた。
それで、今俺は波留を連れて匠のマンションの入り口に立っている。
「久しぶり、元気?」
「よお、最近顔見せないから、くたばったかと思ってたが生きていたか」
蓮の笑顔は幸せそうだし、匠の口の悪さも相変わらずだ。よかった変わりない。
「波留、こちらが俺の兄みたいな存在、でその横にいるのが恋人の匠。こっちが波留、俺の大切な人。よろしくね」
そう紹介すると匠のと蓮が見つめ合って困った顔をした。
「ちょっと、ザック。こっちに来て」
蓮に引っ張られてキッチンに連れて行かれた。
「ザック、人の恋愛に口出すつもりは無いけれど……流石に、中学生は駄目だ」
リビングを振り返ると匠が波留に説教しようとしていた。
「ちょっと!待って、匠!波留は来週には22だから!」
「「えっ?」」
匠と蓮の驚いた声がシンクロした。
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