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第11話

 五月も最終の日になった、この日は波留の誕生日。だから、二人っきりで祝うつもりだった。つもりだった、ってのはできなかったって事だ。  誕生日は二人きりで、波留のところで過ごすはずが……波留は日付が変わっても帰ってこなかった。「政宗に呼び出されたから、少し出かけてくる」そう言って出て行ってそれっきり。  連絡もなかった。  波留は、あの男は恋人ではなくて、親友だと言ってたけれど、相手の気持ちはわからない。  一人で帰ってこない波留を待つ。合鍵を渡してくれているって事は、俺のこと信頼してるんだと思う。  それとも便利な家政婦か何かなのか?まずい、思考がマイナス方向へめぐり出した。  そもそも、波留にとってどんな存在なんだろう、正直そろそろ限界かもしれない。一方通行な気持ちを押し付けられて、波留は優しいから俺のことを切り捨てられないのだろう。  別に身体が欲しいんじゃない、まあそれもいずれはと思うけれど。だって、それだけなら多分押し切ればいけるはず。俺は波留の心が欲しい、けれど目に見えないものを一体どうやれば手に入れられるのかわからない。  蓮を見ていると全てを匠に明け渡しているのがよくわかる。心も身体も全て匠のもの、他の人の気持ちが入る隙間何て微塵もない。  逆にどれだけ重かろうと、大きかろうと、匠の思いは全て貪欲なまでに飲み込んでいる。  俺も波留の全てが欲しい、信頼と未来と全てが欲しい。寝転がって天井の模様を眺める、日本の天井は白くないなと思う、不思議な感覚。木目が渦を巻いてて、まるで俺の思考みたいだ。  もともと諦めるという言葉は俺のボキャブラリーにはない。諦められるような性格なら日本まで蓮を追いかけてはこなかった。  ああ、駄目だ。  ……俺らしくない。  部活の仲間のハギに電話を入れた、そして政宗先輩の住んでいる所を聞き出す。行動あるのみなのだ、波留は誰にも渡さない。

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