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第12話

 ハギに聞いたところによると、政宗先輩は二つ先の駅のそばのワンルームマンションに一人暮らしだと言う。    携帯番号も教えてもらった。何度かかけてみるが、留守電になって繋がらない。朝の八時前、人を訪ねるには少し早いかもしれない。それでも待っているなんて事は俺には出来ない。  昨日から波留の携帯も電源が入っていない。二人きりで何をしているんだ?波留が誕生日を一緒に祝いたい相手は俺じゃないのか?  マンションの前に着く、学生向けのその物件はエントランスがロックされてなく、直接先輩の部屋までたどり着くことが出来た。  インターフォンを続けざまに鳴らすが返事が無い。絶対に中にいるはずだと、ドアをドンドンと強く叩く。人の気配がしたのに返事さえない。  しつこく叩くと、誰かが動く気配がした。  「政宗先輩!ザックです、開けてください!」  中にいるであろう先輩に声をかける、波留がここに居て欲しいという気持ちと、いて欲しくないと言う気持ちとが喧嘩する。  カチャリと音がして下着一枚の姿の政宗先輩が出てきた。  「何?」  今目が覚めたようで不機嫌だ。先輩を押し退けるようにして、ワンルームの部屋の中を肩越しに覗き込むと、ベッドが見えた。  誰かいる、頭に血がのぼる。どうして、何でこんな事に?  「波留っ!」  思わず押しのけようとすると、ガシッと肩を掴まれた。  「お前、何言ってんの?」  力強く、押し戻される。  「波留っ」  ベッドの中で誰かがもぞもぞと動いている。冗談じゃない、どうしてこんな事になったんだ。

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