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第15話

 「初めまして、私が長男の那津(なつ)、これが次男の明希(あき)。で、さっき玄関で応対したのが風由(ふゆ)です。もうお分かりだとは思いますが、季節にちなんだ名前です。そして、波留はその名前の通り、私たち家族の春そのものです。その大切な弟に変な虫がついたと風由が騒いでましたが……。君が、その虫なのかな」  笑顔なのに台詞が怖い。これじゃあ波留に永遠に春は来ない、花は咲かない。まあ、虫がいないと花が咲いても実もならないとはとても言えない。  誰に何を言われても波留を諦めるつもりないし、波留をちゃんと見て、並び立って一緒に成長していける存在だと思っている。年齢が下だからとか関係なく、波留に必要なのは自信を持って俺だと言える。  「波留に会わせてください」  「どうして?波留に会わせなくてはいけないのかな」  「波留と話がしたいからです」  「それは駄目だ。君が波留に相応しいかどうか、まだわからない」  どうすれば会わせてもらえるんだろう。その時、俺たちの押し問答を見ていた美咲さんががたんと大きな音を立てて立ち上がった。  「あー、苛々する!お兄さん達、監禁なんて、やっている事は犯罪一歩手前ですからね。波留をここに連れてきなさい、政宗!波留も波留だし、どうしてお兄さんたちの言いなりになっているのかな」  みんな一瞬、動きを止めて美咲さんを見つめた。  「ほら、早く動くっ政宗!役立たずとは結婚してやらないからね」  慌てて政宗先輩が立ち上がって部屋を出る、この人強い。  「美咲、ドアに鍵がかかってるんだけど」  二階から政宗先輩の声がした。  「そんなの蹴っ飛ばせば壊れるでしょう、なんのためのでかい図体なの?」  いや……ドアを蹴破るための体では決してないとは思う。おかしくて、くすっと笑うと、明希さんが鍵持って慌てて上がっていった。さすがに家を壊されるのは困るらしい。すぐに波留を連れて先輩がおりてきた。  「ザック、ごめん。連絡できなくて、携帯取り上げられたし。迎えに来てくれるとは思わなかった」  にこにこ笑う波留に嬉しくなった。  「波留、可愛い」  俺がそう言うと、那津さん、明希さん、風由さんがその言葉に同時に頷いた。あれ?そこは同じ気持ちなんだ。  「那津兄さん、明希兄さん、風由兄さん、ザックと帰りますね。次だまし討ちしたらもう二度と口はきかないから、今回だけは許してあげる」  兄さん達に反発したという事実にみんなが驚いてしまったらしく、大の男が三人並んでしょんぼりと頭を垂れた。

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