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第18話
返事をする前に決着が付いた。そして、残念なことは俺が波留の兄さんたちを説得できたのではなく、波留の一撃で簡単に片が付いたたことだった。
「兄さんたち、これ以上邪魔すると嫌いになるよ。それでいい?」
冷静な波瑠のその一言で那津さんがあっさりと「わかった」と玄関まで送り出してくれた。二人して波留の家を出る。今まで抑えて来た気持ちが上昇して天にものぼりそう。
「波留、二人きりで誕生日のやり直しをさせてほしい」
波留が嬉しそうに笑う、そして、はにかんで頷く姿はもう破壊級。
「波留、ねえ俺の勘違いじゃないんだよね?波留の気持ちは俺の方を向いてる?」
「もちろんだけど?」
何をいまさら当たり前のことを聞くのかという表情の波留をしっかりど抱きしめる。
「ここ、外だよ?ザック!」
赤くなりながら怒る波留も可愛い。
「じゃあ部屋の中なら良いんだ、俺のアパート行こう」
波留のところではいろいろと不都合だ。
「波留、朝ごはんちゃんと食べた?」
「食べたけれど、なぜ今その質問?」
「体力使うことしてもいいのかなと、確認してみた」
つつっと背中を辿ると波留が俯いてしまった。ああ、俺の言った意味が正しく通じている。一度加速がつくと止まらない。今までせき止めておいた欲求が一度にあふれ出す。こうなると部屋のドアを開けるのさえもどかしい。けれども波留は大切にしたい、だからいつもより長い時間かけて丁寧に口づける。舌先で歯の裏側をくすぐると波留の身体が縮んだ。
どうしてこんなに気持ち良いのだろう。
蓮に口づけた時に、感じた痛い思いと懺悔の念。なのに波留と口づけると、身体が、そして気持ちが浮揚する。
きっと波留は神様が俺の元に落としてくれた宝物。あの時蓮を追いかけて日本に来なかったら、すれ違う事もなかったはず。
「星屑ほどいる人の中で、自分のために生まれてきた人と出会えないで一生を終える人もいるのに、俺は波留にちゃんと出会えた。だから絶対にこの手は離さないからね」
波留は微かに頷いた。それだけでもう十分。俺は今最高に幸せ。
「波留、一緒に」
手を引くと黙って浴室までも付いてくる姿は、幼い子供のよう。本当にこれで社会人になれるのかと心配になってくる。お兄さん達の気持ちも少しわかる気がしてきた、いやいや分かりたくは無いけれども。
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