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第135話

横溝 ひ…… 人の気も知らないでこいつは!! またぐうぐう寝やがってっーーーー!! 風呂に入って頭を冷やし、気持ちを切り替えて部屋に戻ってみたら、夕方と同じように佳川はベッドの上で寝ているではないか! 「はぁ……ったく…なんなんだよお前は……」 …こいつは本当に、俺の事好きなのか? 自分で言うのも何だけど、大好きな横溝幸先輩の湯上り姿とか見たいと思わないのかよ! このストーカー!追っかけ! 少しでも俺を見て、興奮しろ… … 俺の妄想して…それで満足かよ…キスのチャンス逃してそれでいいのかよ… 馬鹿… その何も考えていないような、無邪気で憎たらしい寝顔をグーパンチしたい気分だった。 俺だけこんな気持ちになって…どうしたらいいんだよ… 溜息を吐きながら、パチリと部屋の明かりを消す。 いつものように自分のベッドに横になり、真っ暗の闇を見つめた。 …何も見えないはずなのに、普段とは違うこの違和感… 自分以外がこの部屋にいるのは久しぶりだから… 人の気配と微かに匂いがする… … … まぁまぁ、 落ち着け俺… あいつの事なんか気にせず寝てしまおう。 …… そう思えば思うほど、目は冴えて普段から不眠症な俺は当然眠れるはずもなく… …イライライライラ… …スーースーーー …イライライライラ… …スーースーーー ああああーーーーー!!! ムカツク!!!!! 嫌味みたいな寝息立てやがって! 馬鹿! 佳川の! 馬鹿っ!!! 暗闇の中一人憤慨する自分がいる。 なんであんなに寝れるんだよ!俺は眠れないんだぞ!気がつけよ! …… 真っ暗の中一歩……二歩…… 音もなく部屋のラインを越えて、もう一つのベッドへ近づく… 視界は暗闇に慣れ、仰向けに眠るその馬鹿の元へ… あーもう… 頭にくる何で寝てんだよ… もっと… もっとくだらないこと話して… どうでもいいことでいいからふざけて… 俺の気をひいて欲しい… 冗談言っても、俺は笑わないけど… だけどそれが酷く心地いいんだ… ベッド脇に腰かけて、仰向けに眠る佳川に覆い被さり見つめた。 お前がキスできないなら… 俺がしてやる… 驚け馬鹿… 無意識にチロリと自分の舌を舐め、ゆっくりゆっくりと唇を重ねた。 佳川の柔らかい唇に触れると胸がスンとなる。 …千歳とする友情のキスとは違うし…無理やりされる苦しいツラいキスとも違う… 今の俺は正直ムカついている… イラつきながらのキスなんて初めてだ…しかも相手は寝てるし! ムカつきながらも胸が締め付けられるこの感じってなんだよ… 角度を変えながら、唇を啄む… はぁ…… まるで…… … まるで俺が、 拗ねてるみたいじゃないか…

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