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第141話 ランチルーム
粉川の事件から数日後……
そこには普段と変わらない、穏やかな日々が流れる。
いつもと変わらない学校生活の様に見えるけれど、僕が襲われた事件があってから裏では色々なことが囁かれていた。
それからすぐに、突然の粉川の入院と転校があり、生徒たちの間では僕と粉川の間で成谷先輩をめぐっていざこざがあったとか、一年生の佳川を取り合っているとか、そんな噂が流れていた。
夜の庭で僕が粉川と会った後、成谷先輩が粉川をぶっ飛ばし、粉川の歯が何本か折れてしまった。そのショックで彼は自信喪失してしまったようだ。
実のところ粉川と関係を持っていた生徒は少なくない。
公になっていないが、教員にも数名いたようだと野宮先輩が呆れた顔で呟いていた。
のめり込んでいた彼らは、オモチャを失った子供のようにイライラしていることだろう…
昼休みのランチルームは、大勢の生徒で賑わう。
ランチルームへ入ると、何人かの生徒から挨拶され、いくつもの視線を浴びるのはもう慣れたことだ。
「千歳、……どこで食べよう…」
「……ふ、あはは」
「?」
「わかってるくせに。相手してあげたら?尻尾振ってるワンコみたい」
「……」
ランチルームの奥のテーブルで、昼食をとっている佳川が瞳をキラキラさせてこちらを見ていた。
正直言って、そんな佳川はとっても目立っていて、それでも彼はその自覚がなくて本当面白いと思う。
そりゃあんな子が校内を一人でウロウロしていたら、声の一つもかけてしまいたくなるだろう…恐らく佳川を狙う輩はまだ多数いるはずだ。
「……別に…今は放っておけばいい…」
「えーそんな顔して、そんなこと言っちゃうのう幸ー?ね、佳川と最近何かあっただろ?」
「え!」
「……何その顔…可愛い…妬ける」
佳川がいることを意識している幸は、表情は変わらないけれど、どこかソワソワして落ち着かない様子だ。
これは二人の間に絶対何かあったと僕は睨んでいる。
そしてそんな幸が可愛い。
佳川効果に違いない!
キラキラと見つめてくる佳川を遠目に、幸は無視するようで別の席に座ろうとしていた。
こういうところ幸って、素直じゃないんだなぁとか思いつつ。
入口を見れば、優雅に歩く自分の恋人の姿があった。香乃先輩と一緒だ。
その恋人の愛しい姿に胸が締め付けられてしまう。
……
ランチルームに来ると、いつも思い出すことがある。
香乃先輩が僕が落とした眼鏡を届けてくれた時のことだ。
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