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第3話
都内の片隅にある私立蒼央高校。
ひそかな名門校で金持ちのお坊っちゃんが通う学校である。
学費がべらぼうに高いらしい。
主に政界や財閥の子が通う学校なのだけど、何故か全寮制で自宅からの通学が許されていない。
…そこおかしいっ!
僕的に非常に面倒な学校だ…
別に通いでいいじゃん。
こんな学校ゴメンだって思ったし、勿論抗議したけどさすがに許しては貰えず…仕方ないと思いつつ重い腰をあげたけど…学生寮の自分の部屋が気に入らなくて再び駄々をこねた。
見晴らしがいいとか広いとか豪華だとかセキュリティがとかどうでもいい。
気に入るポイントからしてズレてんだよ…そんなこんなで拗ねてたら、気がついたら世間は新学期が始まり兄さんの顔が青くなり頭を抱えていた。
現在空いている部屋がいくつかあるというので先日見に行ったんだけど…しらけた。無駄足だったと思ったんだけど、半泣きで縋りつきヤケになった管理者が見せてくれた1階のある部屋…それが当たりで気に入りやっとやっと話が進んだのだ。
「千歳これ、俺からの入学祝い」
「あ…」
先日一緒に見に行って決めた眼鏡。
黒いフレームのウェリントンタイプのシンプルな眼鏡。良く見るとただの黒ではなく鼈甲のようにまだら模様が入っていてそこが美しくて気に入ったんだ。
「その古い眼鏡と交換」
「…こっちの眼鏡も気に入ってるんだけどな」
「…さ、さすがにそれはダサ…いや、古いからやめておきなさい。度もこちらよりもう弱いだろ?」
今使用していた学生眼鏡はオシャレではなかったけれど使いやすくて気に入っていた。眼鏡はいくつか持っているけれど手放すのが惜しい…
「ん…これはスペアとして持ってるよ」
使い古した眼鏡を外し、艶やか新しい眼鏡をつけながら兄を見上げた。
「…うん、良く似合う…さすが俺センスいいな」
「兄さん有り難う」
「帰りは学生寮だからな?自宅じゃないぞ?」
「…分かってるよ」
ふわりと優しく抱きしめられた。
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