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第4話
「三階千歳 です。よろしくお願いします」
新しいクラスでの初めての挨拶。
クラス全員の視線を感じつつ丁寧に挨拶をした。
このタイミングでの新しいクラスメイトっておかしいだろうなぁとか考えながらモザイクがかったクラスメイトの顔を眺めた。
無関心冷ややか好奇…色々だよね。
挨拶をして言われた通りに出席番号順の席に座った。
はぁ…
やれやれ…すでに帰りたい。
そう思うんだけど…脳裏に浮かぶのは兄さんの困った顔。
…んー迷惑かけ過ぎるのもあれだよな。
窓の外の緑生い茂る桜の木を見つめながら深呼吸した。
…はぁ…
息苦しいけれど頑張ってみよう。
でも…
この一限目終わったらサボろう…!
そう心に誓ってみた。
「ねぇ三階くんってずっと入院してたんだって?」
「え」
一限目が終わるとすぐに声をかけられた。
「持病があるのかな?それで新学期からずっと学校を休んでいたって聞いたけどもう大丈夫なの?」
「…えと」
…そういう事になってるのか…
「うん、体調はもうほとんど…大丈夫」
「そうかぁ。何か具合悪くなったら言って。保健室の場所わかるかな?」
「うん、真っ先に教えてもらったからわかるよ。ありがとう」
教てもらったのは嘘だけど、校内図を見たのでわかる。
僕に興味を持った生徒が何人か僕に話しかけてくるけれど、それをうまくかわして教室から抜け出した。興味…そりゃそうだろうな。三階って言ったら誰でもピンとくる名前だ。
中庭に興味があったけれど、人がわらわらいたのでそこは避けて屋上へ足を向けてみた。自室には望まないけれど、高い所から眺める景色は嫌いじゃない。清掃行き届いた白い階段と踊り場を通り抜け扉を開けると爽やかな外気が流れ込んでくる。
…はぁ…気持ちがいいな…
思い切り肺に空気を吸い込むと生き返った気がする。
外を眺めると当然校舎や学生寮、テニスコートなど視界に入ってくる。武道館まであるらしい。遠くには見慣れた都内の景色が広がっていて見晴らしが良かった。
…風が気持ちいい…
ここの学校の敷地内は緑が多い。
沢山の植物が植えられ綺麗に整備されている…ここの学校で唯一気に入っているところだった。
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