16 / 142
第16話 最上階
「なんかーすごーく!」
「…」
「珍しくね?」
「…何が」
キラキラした眼差しで一智 が俺を眺める。
学生寮の最上階にはラウンジが設けてありそこで自由にくつろげるようになっていた。
この階の生徒が使用することを許される贅沢なスペースだ。
基本寮内は2人部屋であるけれど、条件を満たし優遇されている生徒は1人部屋を与えられていた。条件ってのは簡単で金持ちか地位があるかどうかってだけなんだけど。
「太我 が手を貸してやるって…ないよなぁ」
「そうか?」
「…そんな甘い笑顔して誤魔化しても駄目だぞ。幼馴染舐めんなよ。て…あははウケるなぁ」
「少し確かめたくてさ」
「確かめる?」
…
そう、確かめたかった。
ラウンジの白いソファに深々と座りダージリンを一口含む。
べしゃーとワザとらしく転び座り込んでいる彼の後姿を見かけた時興味が湧きつい抱き起していた。
男なのに身体は軽い…軽くて…
…あの時の奴と同じ匂いがした。
あのベランダに落ちていた眼鏡の持ち主であり、あの時俺の股間を思い切り蹴った奴に間違いないだろう。
引き寄せたときと抱き上げたときの感覚が似ていた。
…ムカつくけど、
キスは…悪くなかった。
思わずぺろりと下唇を舐める。
「そう…確認したかったんだよ。一智に頼んで渡してもらった眼鏡の持ち主かどうか」
「…受け取ったんだから本人だろ?」
「ふ、まぁね」
「その笑顔やめろー!え何?あの子に手、出すの?」
「…まさか」
「粉川とももうおさらば?」
「おさらばとか言うのやめてくださいよ」
声がした方を見やるとその粉川が丁度ラウンジに入って来るところだった。
一智の表情は変わらないけれど明らかに温度が一度下がった気がした。
「どうした?」
ソファ座る俺の脇にぺたりと座って粉川は上目遣いで俺を見つめた。
1年の粉川秋 誰もが認める美少年で自分大好きナルシスト。
入学して早々俺に一目惚れしたと告ってきて、ただいま俺の遊び相手というかセフレというか…そんな曖昧な関係。
…
普段はここまで上がってくることはない。
粉川の部屋は階が違う。
ともだちにシェアしよう!