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第20話 兄さん

   週末は外出届を提出し兄さんと食事だ。 …と、言うことは… … 「……」 「も、申し訳ないです」 「どうやったらこんな傷が付くんだ…千歳…」 「落とした…」 「…」 「屋上から…」 「はぁあああ?屋上?」 思い切り呆れ顔の兄さんは溜息をついて傷付いた眼鏡を眺める。 …本当申し訳ない。 「レンズ交換したら使えるよね?」 「…作り変えた方がいいに決まってる。フレームにもわずかに傷がついてる。どうして前の眼鏡をつけているのかと思ったらそういう事か」 行きつけのイタリアンのお店で会う兄は仕事帰りでスーツ姿だ。 自分の兄だけれども思い切りカッコいいと思う。いつも忙しそうにしているけれど、僕の事に関しては優先的に考えてくれてるようで優先順位は仕事より僕だった。って仕事を蔑ろにしているわけではないんだけど…ただのブラコンなんだと思う。そこまで面倒かけさせてるのは他でもない僕自身なんだけどね。 「あ、これ美味しい…レモンの味がする」 「レモンのポテトのニョッキだな。添えてある生ハムとエビも美味いね」 「…ニョッキだけでいいかな」 「だからね…好き嫌いするから伸びないんだよ」 「…」 「やれやれ…この眼鏡預かるぞ。これと同じ型でいいんだろ?注文しておくよ」 兄さんは白ワインを一口飲み、僕の眼鏡ケースを鞄に収めた。 「あ、それ度をさ少し下げて欲しいんだけど。かけてたら頭痛くなってきて…あれなら僕も一緒に行くけど」 「…これは俺がやっておく、まかせておけ。千歳は学校。勉強が最優先だ。どうだ学校は?」 「…」 「…その顔やめろって…」 「部屋の庭の柵が壊れてるらしいから物騒だぞって言われた」 「はぁ?よし明日すぐ修理させよう。管理会社どこだくそぅ」 …水を飲みながら眉間に皺を寄せる兄を眺める。 あんまり色々言うと心配するからこの件だけ伝えておこう。柵はアンティークな鉄格子みたな感じだけど、金具が錆びて抜け落ち隙間ができていた。何が起こるか分からないのは確かだしあいつが言っていた通り物騒だ。 「眼鏡直ったら届けさせるから」 「うん。兄さん本当ゴメン」 「いいよ。で、その物騒だって言ったのは誰だ?先生か?管理人か?生徒か」 「…あー通りすがりの生徒?名前は分からないや」 「生徒?ふーん…誰だろう」 「まだクラスメイトの名前もちゃんと覚えてないからさ。分からないや」 兄さんに成谷って言ったら気になってすぐに色々調べさせるだろうし、余計なことしそうだからとりあえず黙っておくことにした。

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