21 / 142

第21話 汚れ

ある日の朝、自分の教室へ入ると一部に人だかりができていた。 何かと思って覗いてみると、机が汚されていて机の上にはベタベタと写真が複数枚貼られている。 かなり際どい卑猥な写真で、顔は写ってこそないけれど恐らくこの机の持ち主だろう…それと同時に誰がこんな酷いことをやったかも分かってしまった。 … 横溝の机だ。 写真の他に汚れた泥水がかけられていて机の中までビジャビジャになっている。 …酷いことするな… そう思っていたところに横溝が教室に入って来た。人だかりと自分の机を見て固まる。 事態を把握したのか、顔色が悪く今にも倒れそうだ。 「あのさ、替えの机がないか職員室に行って先生に用意させてよ」 隣で固まっていたクラスメイトに声をかける。 「え!?俺?う、うん!」 「それと君、バケツとモップ持って来て悪いんだけど拭いてくれるかな?」 「わ、わかった」 「うん!」 顔面蒼白の横溝を僕の席に座らせ、落ち着くように背中をとんとん優しく叩いた。 「落ち着いて。…帰るか?」 「いや、大丈夫…ゴメン…」 「じゃ、ここに座ってろ」 横溝の席に行きボンドやテープで付けられた写真を全て剥がしていく。泥水ではなく嫌な臭いがするので汚水だろう液体には雑草や土が混ざっており床まで汚れていた。その机を一階まで抱えて運び裏庭の水のみ場まで運ぶ。そこには花壇に水をまくためのホースがあるからだ。それで一気に汚水を綺麗に流した。 はーーーーーー! 最悪だ。 …臭いな…生臭く尿の臭いがする。 制服は運んでいるうちに汚れ見事に臭い。 写真を剥がしたせいもあって手のひらからも臭い匂いがした。 こんな汚い机廃棄だな。 …見たくなくてもどうしても視界に入ってしまう写真はどう見ても合意で撮られたものではなかった。 手足を拘束された横溝に覆いかぶさる男…恐らく細田だと思われた。 今朝教室に集まっていたのは4、5人だからそいつらにはばっちり見られただろうな… 手を洗いホースが繋がっている蛇口を閉める。 クンクン。 「はぁ…着替えないと駄目か…」 ばっちりシャツも汚れてしまってやっぱり臭う。 「更衣室まで護衛でもしてやろうか?」 … 背後から野太い声がかかり振り向くとそこに細田の姿があった。 …たぶんこいつが細田。クラスはうちの隣だっけか? 遠目でしか見たことがないし興味もないので確信が微妙。 「ええと…」 「細田。細田俊哉(ほそだ としや)だよ。三階くんだろ君。あーあ、幸のお世話して汚れちゃったね?」 … 「幸?」 「横溝、横溝幸(よこみぞ さち)だよ。三階くんには幸はお勧めできないから近づかない方がいいと思うよ。もっと違うお友達を探した方がイイ」 細田は体格が良い。長身ではないけれどどっしりとしていて柔道とか格闘とかしてそうな体つきをしていた。力技では絶対勝てそうにない相手だ。 「あの、これやったの君だろ?とても臭いよ」 「あはは!なんで俺なんだよ。三階くん酷いなぁ。そーんな酷いこと誰がしたんだろうな」 …おー凄い嘘つき。写真にお前がつけてる腕時計と同じものがばっちり写ってたんだけど! 顔つきも品がなく喋り方も僕の好みではない。 あ、こっちくんな! 「そうなんだ…ほら君と横溝との噂ちょっと聞いたからてっきり君かと思った。こんなことされて横溝…可哀想だよな」 汚れを落とした机はここに置き、とりあえず教室へ戻ろうと足早に廊下を歩く。 すると細田も一緒に何を考えてんだかくっついて歩く僕の肩に手をかけてきた。 …ぎゃーーーー触んな!!! ゾワリと寒気がするっ! 「幸は俺の恋人だから本当心が痛いよ。心配してくれる三階くんは優しいのな…あのさ、机掃除してくれたお礼がしたいんだけど…」 「お礼?」 全身鳥肌が立ちながら必死で細田の話に耳を傾けた。

ともだちにシェアしよう!