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第23話
シャーーーー
…
…
「三階、頭洗ってあげようかーーー?」
「…いえ、大丈夫です」
「えー?何ーー?」
「だ、大丈夫ですーーー!!!」
大声で叫び全力で好意を跳ね返した。
何故か…何故か僕は香乃先輩の部屋のバスルームで髪を洗っていた。
普通に自分の部屋に帰って、自分の部屋のバスルームを使えばいいのに…そう言ったのに受け入れてくれなかった。
…なんで?どうして?
寮の自分の部屋に帰りたいんだけど…
髪を洗い終わり、使ったことのないボディーソープで丁寧に身体を洗い汚れ…ついた臭いを取り除いていく。
…甘い花の匂いがする…
自分では選ばないような香りだけど悪くない。先ほどまで纏わりついていた悪臭が消えていくのが分かった。
全身綺麗に洗って脱衣場に上げると脱いだ制服が見当たらない。その代わりに真っ白でふかふかのバスローブが一枚置かれていた。
…
へ…
これを着ろと?
「制服クリーニングに出したから明日受け取ってね。下着は今洗濯中だから、暫くそれ着ててよ」
「…」
マジか…
「わー!いい匂い俺と同じ匂いー!三階、生き返っただろー?」
「は、はい。すみません…色々していただいて…あのでもこれじゃ帰れない…」
バスローブ1枚の姿でおずおずと出ていく。
中は当然素っ裸なので、落ち着かない!落ち着かない!
「あはは、お節介したかっただけだからさ。ほらこっち座って」
広いリビングのソファに腰かけると、温かい紅茶を出してくれた。最上階のこの部屋は見晴らしもよく校舎とその先の都会の景色も望むことができる。
「濡れると髪ストレートになるんだね。顔小さいなぁ。うーん…やっぱり眼鏡ない方がいいんだけど」
「あ、あの視力弱いんで眼鏡必須なんです」
隣に座った香乃先輩は僕の濡れた髪を指先で摘まみながらどんどん距離を詰めてくる。
ち、近い。凄い見られてる…
「髪の毛乾かすからさ、メガネ外そうか?俺外してあげるよー」
「え、あのっ!自分でしますっ」
「えー遠慮しないでいいから。っていうか外させてよー!ほらほらそんなに暴れるとバスローブ開けちゃうよー!」
「あのっ!ちょ」
ガチャ
「香乃ー!連れて来たーー…ゾ……」
「…!」
誰か部屋に入ってきたと思ったら知らない先輩?っぽい人と横溝が二人ドアの前に佇んでこちらを見ていた。
というか固まっていた…
僕はと言うとソファの上で眼鏡を外そうとする香乃先輩ともみ合う形になっており…バスローブは開け肩が丸見えで…傍からみたら先輩に押し倒されている状態であったのだ。
つかつかと無言で歩いてきたその先輩は香乃先輩の頭を一発殴る。そして手際よく僕の開けたバスローブを直し綺麗に整えてくれた。
「香乃っ!お前がそんなに見境のない奴だったとはっ!恥を知れっ!!」
「!!ちがっ!違うって!!誤解だ誤解!!俺を叩くなっ!」
「良くこの状況でそんなことが言えるな!…大変失礼なことをした。君が三階くんか?俺は2年の野宮碧人で生徒会長をさせてもらっている。何もされていないか?こんな格好させて本当やらしいったらないな。毛布でもひざ掛けでも用意しよう。あ、横溝もここに来て座っていなさい。香乃、温かい紅茶飲ませてやれ」
「…はいはい。本当来るのが早いんだよもう…イチャイチャできなかったじゃないか…対応早すぎー」
そうぶつぶつ言いながら香乃先輩は席を外して紅茶をいれにキッチンに。
「あの一応襲われてたとかじゃないんで!髪の毛を乾かすのに眼鏡が邪魔だったんで先輩が外そうと…」
「髪?ああ、乾かした方がいいな。ほらこれ掛けていたほうが落ち着くだろ。ドライヤー持ってくる」
そう言いながら野宮先輩は、ふわりと僕と横溝に柔らかな毛布を掛けてくれた。
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