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第32話
「はーい!はいはいっ!馬鹿野郎ーーーっ!!!それアウトだろ!!」
どこからともなく聞いたことのある声が倉庫に響き渡る。
…
…
はぁ…はぁ…
…遅い…って……
対応…遅い!マジ!!!
マジヤバかった…本当に…怖かった……
あのまま本当に…と思うと心がどうにかなってしまいそうだ……
心臓がバクバクで全身から冷たい汗がでる。
身体が震え…身体が硬直しておかしい。
……
すぐにバタバタと複数の人の気配と声。
抱きかかえられる感覚と口に張り付いていたガムテープが丁寧に剝がされた。
気が……遠くなりそうだった。
「おいっ!三階しっかりしろっ!終わったぞ!」
「…ん」
すぐに手足を拘束していたガムテも外され身体も解放された。
小刻みに震えているけれど、しっかり抱かれ伝わってくる人の体温が唯一心地よかった。
「防犯用に取り付けたカメラがこんなに早く役にたつとは思わなかったな…大丈夫か三階。本当にすまなかった…怖かったな…」
そう言いながら頭を撫でるのは生徒会長の野宮先輩。
「細田の部屋からパソコンとデータ入ったUSBメモリーも押収できた。スマホも没収だ。細田に協力していた生徒もすぐ吐いたからスムーズに行くと思っていたら、あいつパソコンを隠していやがってそれを探すのに手間取った…すまんな」
「いえ…大丈夫…です」
「ここでの一部始終も録画されてるからまず言い逃れできないし。内々だろうけどちゃんと処罰されるだろうね」
上半身起き上がると眉間に皺を寄せた香乃先輩が心配そうに僕の事を見つめていた。
「…本当…無茶をするな…」
「だ、大丈夫です…適任僕しかいなかったし…」
「そうだけど…」
そして優しく背中をさすりずっと抱きしめてくれている人物を見上げた。
…成谷先輩だ…
「よく頑張ったな…」
その表情は少し怒っているようにも感じられたけどその囁く声はとても優しい…
…
「はい…」
「立てるか?」
「立てます」
抱きかかえられるようにひょいと立たしてもらい…
すぐに…
ぶっ倒れ意識を失ってしまったのだ。
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