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第36話
「はは、そこはあんまり気にしないで」
「……意味が分からないです」
「それよりも俺だって気がついてくれて良かった。気がつくようにわざと多めにスキンシップしてたからさー…抱きしめられたときの感覚とか…覚えてるだろ?」
すりすりと顎のラインに添って先輩の指が動く…
そのたびに肌がぴりぴりしてくる感覚は何だろう…
成谷先輩の甘い笑顔を見てると…何だろう心がもやもやしてくる…
この人の笑顔は優しいけれど…どこか嘘っぽさが漂う…作り笑いというのかな…
それが…
何か嫌。
むに…
「………何…してるの…」
「なんか…成谷先輩の笑顔が嘘っぽいなぁ…と思って…頬を引っ張ってみました」
「……」
そう…気がついたら目の前の成谷先輩の両頬を摘まんで横に引っ張っていた。
綺麗な顔が台無しだ。
というか僕結構失礼なことをしているんじゃ…そう思い慌てて手を離した。
「あ、すみません」
「…」
「あ、あの!もう僕自分の部屋に帰ります。迷惑かけてしまってすみません」
「……」
「僕の服どこですか?」
「…んーー駄目」
ペチン!おでこをデコピンされてしまった。
「…いっ…た!」
「……本当、いつもなら速攻で手出してるんだけどなぁ。今回はあいつらと約束してるから無理だ」
「え」
「あのね、そんな痛々しい姿の君を独りにするわけにはいかないよ。熱あるし特別に手は出さないからここで安心して寝なさい」
そう言いながら先輩は僕の手首に触れ、痛々しく残っている拘束の痕を優しく撫でてくれた。
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