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第46話

それから数日たった日、式典で読み上げる原稿を担任の森から受け取った。 「…結構ありますね」 「はは、気合はいってるよ!60周年だからね!君が読み上げるの楽しみにしているから!」 「…はぁ」 受け取った原稿をペラペラ捲り一通り目を通してみる…面倒くさくて実家に帰りたい。 … 仕方ないかぁ…明後日は気合で乗り切るしかない。 机の中に原稿を押し込んで横溝と一緒に委員会に向かった。 はじめはサボろうと思っていた委員会も横溝が一緒にいるので何とか出席できている気がする。 「三階って真面目そうなのにそんなにサボること考えてるのか…」 「…面倒くさがりなんだよ…」 最近はもう横溝にサボっていることがバレている… 横溝は一人でいたということもあってかあの事件以来は僕と一緒に行動することが多くなった。 委員会も同じだし、無口かと思っていたけど結構お喋りだ。 「それなのに勉強はできるってどういうこと…可笑しいでしょ」 ははは、と笑うとつられて笑う美人顔が少し可愛く見えるから面白い。 初めて一緒に委員会に参加した時と横溝の印象は大分変っていた。 憑き物がとれるとこうも変わるものかと思う。 …良かった… 「挨拶運動の日は起こしに行こうか?」 「う、うん」 「そ れ か…前の日から一緒に寝てあげてもいいけど?」 「ぷ…何それ。遠慮しておく…でも起こして欲しい」 「了解」 委員会を終えて寮に戻る途中にふと聴こえる楽器の音色。 ……管弦楽部かな? 確かこの学校の部活動にあったはず。 「これ…管弦楽部かな?」 「そうだね。式典で演奏があるみたいだから今日は体育館で練習らしい」 「そうなんだ。大変だなぁ」 「ちょっと覗きに行ってみる?知ってる人いるよ」 「え」 そのまま方向を変え体育館に続く廊下を歩くと演奏の音色は近づくにつれ大きくなってきた。 あ、これワーグナーだ。 「中に入ると先生に怒られそうだから…」 体育館の入り口からそっと中の様子を伺ってみた。 数人の先生とその前には生徒で編成されたオーケストラ。 …人数は40人くらいはいるのかな? へぇ…結構レベル高いかもしれない。 「…三階…知ってる人わかった?」 「えー…」 知ってる人と言われてもそもそも知り合いがあまりいない…と思いつつ眺めていたけれど… あ、 いた…… オーケストラの中でも一際目立つバイオリンのトップに香乃先輩の姿。 バイオリンを弾いている姿はとても絵になるくらい優雅でカッコいい! 「香乃先輩いた…凄い上手い…」 「見つけた?他の奴とオーラが違うよなー」 香乃先輩は音楽一家だって言ってたっけ。 確かに格段に上手いし周囲と比べてオーラが違った…王子様みたいで生徒に人気がある理由がわかった気がした。 「お、君達は入部希望なのか?」 「え」 突然後ろから声をかけられ振り返ってみるとそこには生徒会長の野宮先輩が立っていた。 それとその後ろに副会長の…廣瀬亘(ひろせ わたる)が控えていた。 「三階と横溝は何か楽器できるのかな?」 「え!いや全くです。入部とかそんな気さらさらないんでっ!ただ合奏しているのを覗きに来ただけです」 「うんうん!」 「あはは、そんなに焦るな。一智にも用はないのか」 「はい!…野宮先輩は…用事ですか?」

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