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第52話

土の香りと柔らかな風が心地好い… ……もう…動きたくないなぁ。 うつ伏せになり丸くなっている状態でゆっくり呼吸を整える… すると… ぐいっと身体が浮く感覚… …… んあ…? フワリと抱きしめられていると理解できたけれど、振り払う力が出てこない。 … 「良く…頑張ったな……」 「……」 この感覚と香り…初めてではないし、嫌でもない… …でも抱きしめられると困る。 困るから… 今の僕は余裕がないから… こういうことして心に入り込んで来ないで欲しい… この温もりに癒されてしまうのが嫌だ。 駄目… 無駄にドキドキしてくるから…本当やめて… 「顔が…近いです。成谷先輩…顔…が…」 … … ?? 温かい感覚に息ができない。 唇を塞がれキスをしていると脳内がなかなか理解してくれず…停止。 … キスされている! 「ん…っ」 チュッというリップ音がして唇が離れた。 真っ直ぐ見つめる瞳は美しく揺れていて、先輩の切ない表情にいつもの甘い笑顔は消えていた。 そんな顔…するんだ…… 「…ちょっと邪魔」 そう呟いてからするりと外されたのは僕の眼鏡。 「…あ、あの」 「ちょっと……黙って……」 ! そして何故か再び重ねられる。 ……!! ちょっ… ちょっと待って!! なんでキスしてんのこの人!! さっきしたものより深いキス…厚い舌が僕の口内に入りうねる。 舌に絡み付きなんともいえない感触に驚いてどうしたらいいかわからない!はね除けたくても…力が入らない… 力が抜けて… いく… なんで… 「は…はぁ……はぁ…」 「…」 長い長いキスが終わりやっと唇が離れる。唾液で濡れた成谷先輩の唇が……やけに色っぽく見えた… … … 脳内処理が追い付かなくて言葉が出てこなくて… でも頭にきていて、 再び乱れた息を切らせながら先輩を睨み付けた。

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