55 / 142

第55話

「な、な、何を…するん…ですか…!」 「…悪い…式辞お疲れ」 「はあぁぁ!!!?」 悪びれた様子もない成谷先輩ははにかみながら僕の頭をポンポンし外した眼鏡を返された。 相変わらず美形でカッコいいし、長めの髪がくるんと頬のラインにそってカールしているのが可愛らしいのが何かムカつく。 「原稿は…あれ白紙だったのか?」 「え」 「…別のにすり替えられていただろ?」 「……なんで…それ」 「式典前にお前の原稿破いてる奴がいた。悪いな…原稿だとわかってたら直ぐ止めることができたのに…」 「…そう…ですか…いや、いいんです。何とか見繕ったから…もう終わったし…」 「原稿…暗記してたんじゃないのか?」 「え、あーあんまり…でも前にも式辞したことあって…そっちを覚えてたからそれをベースにしてあとは適当に聞けるように組み立てました」 「…マジか……」 「お陰でこのざまですけど…しかも…まさか先輩に襲われるなんて…酷すぎる……」 余裕ない時に遭遇するなんて…あんまり会いたくも話したくもなかったし… … 何か避けてたし… 「…ここはさ、俺のお気に入りの場所だったりもするんだよね…三階が気に入る前からさ。それに…」 「…」 「さっきの…続きがしたい……」 「…」 「…」 「…え?」 「……反応…おそい…」 今の続き… とは…? 近づく成谷先輩の瞳を見つめるけどドキドキして答えが出てこない。つい…と顎を人差し指で上げられた。 … スローになって成谷先輩の整った顔がアップになっていく… 動けない… 唇がまた…… 「っとう!」 ガサガサと茂みが震えたと思ったら、そこから横溝が飛び出してきた! 僕と成谷先輩の間に分け入ると強引に僕を抱きしめ… チュー!っとキスされてしまった。 … !!!! な、何なんなんなん……!!!

ともだちにシェアしよう!