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第58話
粉川
…
?
あれ?おかしいなぁ…
ふ、普通に読んでる…
っていうか原稿見てない…読んでないけど、お、覚えているのか?
でも今まで全然原稿読んでなかったし、机にいれっぱなしだったよね?
三階の式辞を聞きながら頭が混乱していた。
俺の計画では、違う原稿になっていて慌てふためく三階の姿を見たかったんだけど…
…全然じゃん…
つまんなーい。
赤っ恥かいて嗤われればいいのに…
そう思ったんだけど。
……
「……はぁ…何なのあいつ」
立派過ぎる式辞を聞いてるとやっぱりいいとこのお坊っちゃまって違うなぁって思った。
…いつの間にか暗記してたなんてズルい。
頑張って偽の原稿作ったのに…役に立たなかった。
あームカつく!
…
成谷先輩に嗤われるような失敗をすればいいのに。
式典は平和に進み、昼食を兼ねたパーティーが始まった。
三階を労おうと姿を探したけど、姿が見当たらなかった…何…どこに行ったんだよ…とモグモグ食べながら辺りを見渡した。
横溝もいないし…ちっ!二人で抜け出したのかな。
そして大好きな成谷先輩の姿も探す。
「粉川」
「あ、先輩!」
振り替えるとそこには笑顔が花咲く大好きな成谷先輩が立っていた。
俺のことを呼んでくれるだけで嬉しい…
「誰を探してた?」
「え、成谷先輩に決まってるじゃない」
「そう…?てっきり違う先輩でも探してたのかと思ったよ」
「…はい?」
顔を傾げてみたけれど成谷先輩は微笑むだけだ。
…やっぱり……素敵な笑顔…
「粉川…おいで」
「う、うん!」
嬉しい!成谷先輩からのお誘いだ!
体育館の人混みを掻き分け校舎に続く通路を歩く。
するりと成谷先輩の腕に自分の腕を絡めて寄り添うように歩いた。
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