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第61話

野宮 今朝は風紀委員が行っている朝の挨拶運動に生徒会も合流し、校舎に続く遊歩道に立ち身だしなみのチェックを行う。 お坊ちゃま学校なので過度に風紀を乱すような生徒はいないが、身だしなみに関しては登校時間がギリギリになればなるほど増える傾向にあるようだ。 「ん、三階は今日は?」 三階は風紀委員で今日は当番になっていたはず…なのに挨拶運動のメンバーの中にその姿が見当たらなかった。 三階と同じクラスの横溝に声をかける。 真面目で繊細そうな横溝が暴行された事件からひと月は経っていた。 あの時に比べると彼の表情も大分良くなったと感じる。 「…体調が良くないようなので、今日は欠席するとのことです」 「そうか」 ちらりとこちらに向ける視線は一瞬だけど、彼が嘘をついているのがわかった。 …はぁ、やれやれ…三階はサボりか。 そういえば、風紀を乱す奴等が身近にいたことを思い出した。 どうしてこうも俺が気に入る奴はサボる奴が多いのか… 太我は学校には行くが午前中はどこかで寝ていて授業は午後から参加するし、一智は授業中でも堂々と抜け出してランチルームで平気でお茶をしたりする。 二人とも成績は良いし家柄も関係してか学校側も何も言わない。 能力的には問題ないので一度生徒会に誘ってみたが「面倒くさい」の一言で断られた。 一年生に生徒会有望な生徒が入ったと思ったら入学式をすっぽかすんだもんな… 三階千歳…イメージより大人しく控え目な人物だった。大柄な俺とは全く異なるパーツで形成された骨格は華奢でひ弱そうだ…あれは俺から見たら男じゃぁないと失礼ながら思ってしまった。 成谷やその他のそれ好きな奴の餌食になるだけだ…そう思ったんだけど…中身は意外と度胸があった。 細田の事件で自らおとりになると言い見事自分の仕事をやってのけた時は感心した。 ただのお坊っちゃまではない…その外見とのアンバランスさが魅力的だ。 …一智が騒ぐように良く見れば眼鏡の奥の瞳は大きく可愛らしい… そして… …… 「…はは」 「…?どうしました?」 隣にいた副会長の廣瀬が不思議そうな顔をしてこちらを伺っていた。 「いや、何でもない」 つい最近、成谷が一年の粉川を成敗したらしい。 やりたい放題の粉川をいつまであいつは放っておくのかと思っていたけれど…やっとだ… 成敗した原因に三階が絡んでいたことが面白いな。 本当に面白い。 なかなか見れないあいつの貴重な行動に… 何故か一智がワクワクしていた。

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