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第63話 想う
横溝
…
大体いつも真夜中に目が覚める。
…気持ちが悪い。
冷や汗をかいて魘されてばかりだ。
あの悪夢のような出来事から解放されてもまだまだ俺を縛りつける…
ハァ…ハァ…
あの生々しくいやらしい出来事は忘れることは出来ない…無理矢理拘束され抱かれて浅ましい姿をさらし続けてきた。俺と同室の一年は危機感を覚え同じ目にあってたまるかと俺とは口一つきかない。
一人で耐えるしかなかった。
しかしずっとずっと続くと思っていたことが、一人のクラスメイトによって解決しその苦痛から解放してくれた。
本当に…
本当に信じられなかった。
辛くて怖くて毎日泣いていた涙が嬉し涙へと変わりまた泣いた。
こんな悪夢…あの時の恐ろしさに比べたら何てことない……
…
三階……千歳のことを想う。
一人外れた俺のことなんて放っておけばいいのに…何で君は…
冷や汗を掻きながら千歳のことを考えると気持ちが徐々に安定してくる。
…抱きしめてもキスしても足りないくらい感謝している。震える身体はまだ誰かと繋がることなんて到底無理だけど、千歳のことを考えると涙がでてくる。
絶対に自分と釣り合わないってわかっているけどそれでも好きだ。それが友情なのか愛なのか尊敬かわからないけど好きなことには変わりなかった。
……
千歳…本当有り難う。
だから俺は千歳についていくし千歳を守るよ。
あの、
成谷先輩から…!
……
全然自信ないけどっ!
ビジュアルも運動神経も家柄も頭も全てあちらの方が上だ!!
ついでに千歳の心も持って行かれてるっぽいっていうね!!
だけどあんなだらしない男に千歳をやるわけにはいかない!絶対許せんぞ!
挨拶運動は成谷先輩と遭遇する確率が高いので千歳は休ませた。
生徒会長の野宮先輩にはサボりだって見抜かれているんだろうけど、そんなこといちいち気にしていられない。
…暫くすると成谷先輩本人が登校。
正直言って…カッコ良くてカッコ良くてえぇぇオーラが凄い…タラシと言ってしまったことを謝罪したくなるくらいだ。はぁ……隣にいる野宮先輩と軽く会話しているだけなのに手汗が凄い…
「…やぁ…おはよう横溝」
ひぇ!!!!
「お、おはよう…ございます…」
急に挨拶されて激しく動揺してしまった。とても視線を感じるけど…目を合わせることなんて無理無理!!
くそー!
隣にいる野宮先輩に絶対変に思われているけど俺は負けない!
しかし、挨拶運動が終わり教室に向かおうと一年生の下駄箱で上履きに履き替えていると…
「…」
ひ、ひぃ…
目の前に…成谷先輩が…い…るーーーー!
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