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第64話
横溝
うあっと…ヤバい…冷静になれ…動揺しない動揺しない…見ちゃ駄目だ見ちゃ…
明らかに俺のことを待ち伏せしていた成谷先輩は優しい視線を俺に送っている。
他の一年生は驚きながら先輩を横目に教室へ消えていった。
そして俺も…生徒の誰もが憧れる成谷先輩を無視して目の前を横切る…
…
ポン
「ひあぁぁぁ!!!」
後ろから肩に手がかかり変な声が出てしまった!
「はは…緊張し過ぎだろ横溝…」
「…な、な何ですかっ!」
「何ってわかってるんだろ?お前ら…完全に俺のこと避けてるだろ」
「…」
「何、三階にキスしてるのがそんなに頭にきた?」
「…!」
にっこり微笑むその笑顔が素敵過ぎてくらくらする!
勿論それもある!
偶然とはいえ二人が抱き合い長々とながったらしくキスをしている姿はショックだったしムカついた。
だから先輩にあんな暴言も吐けたんだ。
「…頭にきましたよ。千歳は体調が悪かったのに無理無理キスするなんて非常識です」
「…はは、そうだね。…君もしたけどね」
「!千歳も怒ってます!」
「…そうか」
ふっと微笑む成谷先輩が少し切なそうで、心がキュッとなった。
「…せ、先輩って…千歳のことどう思ってるんですか。…俺は…好きです。先輩は粉川って恋人がいるのに千歳にキスするとか…完全遊びにしか思えません。そんな気持ちで千歳にあんなことしないで下さい。千歳だって迷惑してます。凄く困ってます…」
「……」
「千歳は本当にいい奴だから…からかわないで下さい」
「…恋人がいたことはないけど、そう勘違いさせていたのは俺だからなぁ。横溝が俺のことタラシだっていうの否定できないし。三階のことは…遊びじゃないよ。でも…好きかって聞かれたら…」
…
「それをもっと確かめたいんだけど、思い切り避けられてるしね」
「す、好きかわからないなんて…意味わかりません!それに…タラシは門前払いです!千歳の気持ちっ!考えろっ!」
そう叫んで逃げるように立ち去った。
わ、わ!
あぁぁ!!!!
俺は何てことを!
あの成谷先輩に言ってしまったんだっ!!
ごめんなさい!!!
ごめんなさいぃ!!!!
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