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第66話 夏休み

成谷 学校が夏休みに入り、その間も毎日の朝のランニングとトレーニングは欠かさない。 身体を動かしているのは好きだ。 … 毎日暑くてキツいけどそれも嫌いじゃない。 今日はクソババアにとあるブランドのパーティーに出席しろと言われている。 ニコニコ笑ってるあのクソババアの顔を見ると胸焼けがしてくる。 必要な時だけ俺の前に現れあれしろこれしろ煩くて堪らない。どうせモデル達のご機嫌とりに使われるだけだ。 シャワーを浴びそこのブランドの新作の服に着替えて支度をすませる。あー面倒くさいな…顔見知りのモデルもいるだろうけど気が乗らなかった。 …車の中でぼーっと流れる景色を眺め都内の目的地に着くのを待った。 いい生地だけど動きにくいな… ここ数年人気のこのブランドは、様々な企業と事業や提携していてうちとも切り離せない関係となっていた。 こういう人の集まりに社会勉強の一環として母親と一緒に連れていかれたが、最近はクソババアが忙しいときは一人だ。 俺じゃなくてババアてめぇ一人で行け! 「ふふふ…いつもみたいに誰か綺麗な子誘えばいいじゃない」 「…」 マジムカつく厚化粧のクソババアはさっさと別の仕事へ行ってしまった。 高校生の息子に接待させる親がどこにいるんだよ。 マジてめえ一人で行け! 外の景色は次第にお洒落な街並みに変わっていく。 車はとある建物の前で止まり運転手がドアを開ける。 … カシャカシャと鳴る撮影カメラを無視して内部へ、何とも言えない香水の匂いが漂う。 きらびやかで高級そうな雰囲気の中いつもの笑顔で突き進んで行った。誰とでも穏便に面倒な問題が起きないよう作られたこの微笑みは本当に役に立つ。 「あー!太我くーん!お久しぶり!」 「こんにちはー」 シャンパン片手に抱きついてくるモデルの一人に挨拶すると、気がついた周りの女性たちが集まってくる。 「少し会わないうちにまたカッコ良くなって!早くうちの事務所に来なさい!」 「あら、太我くんはモデルに興味ないって言ってたわよねー?勿体無いからうちに就職したらいいわよぉ」 「太我くん写真撮りましょう!」 「あはは、お姉さんたちテンション高いですね。今日もお綺麗だなぁ…就職に困ったときは是非相談させてください」 それぞれに軽くバグしてあげると喜ぶことは知っている。 スゲー香水の匂い…… 「太我くんまたご飯…行きましょうね?」 ぎゅっと抱きしめられながら耳元で色っぽく囁かれる… あ、この人と飯食いに行った後一回ヤったなぁ… 身体を必要以上くっつけてくるからなんだろうと思った。 優しく抱きしめ返したとき…… … 目の前に三階がいた。 … じぃっとこちらを無表情で見つめていたので、抱きしめたまま固まってしまった。 … …な、何故ここにいるんだ。

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