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第71話
「千歳、お前の身がやはり最優先だ」
…
…
…
「三階…顔が死んでるぞ?」
「…」
成谷家の車の後部座席の端に座り、外の景色にガン垂れる。
…
気分も体調も最悪だ。
今日は仏滅だっけ?
厄日か。
こんなに機嫌が悪いことなんて今まであったか…
ああなった兄をとめることはもうできない。
それに父さんも同意見なら崩しようがなかった。
結局、その場で寮の部屋の引っ越しが即決してしまったのだ。
1階から12階の最上階へ。
…
「…なんで…あんなこと…言ったんですか…」
視線を外に向けたまま呟いた。
「え、何?聞こえない」
グイっと無理やり引っ張られて態勢を崩す。そのまま成谷先輩の膝に仰向けに転がる状態になってしまった。
!!
「き、聞こえてるでしょ!」
「…聞こえてる。あんなことって色々あるけど、まあ全部ワザとだよ」
「酷い!!っ!」
起き上がろうとしても押さえ込まれてしまい先輩の膝の上でジタバタするだけだ!
この腕振りほどけないー!
「今まで散々俺を無視した罰」
「!!」
…
「俺のこと横溝と一緒に避けてただろう?」
まつ毛…長い…
そんなどうでもいいことを思いつつ成谷先輩の顔を見つめる。
…やっぱりというかバレてるよな。
「……避けてました…けど…横溝は悪くないです!」
「なんであんなに避けんだよ」
顔が!顔が近い!!近いからっ!!!
「…ひぃ」
「おー眼鏡曇った…」
そう言いながらするりと眼鏡を外されてしまった。
「な!」
「…熱いな…このままで構わないから寝てろ」
おでこに手を当てられてもうどうしたらいいのかわからない。
駄目だ、動悸と頭痛がする。
こんな、こんな先輩の膝にゴロンしてる状態が僕の体調を悪化させてる原因なんだと言いたい!訴えたいけど、その理由を先輩は知りたがるはずだから死んでも言いたくないー!
心臓が…もたない…
「…可愛い…」
ふわりと前髪を撫でられた。
か、可愛いってなんだよぉ…
怒りたいんだから…
「恨んでるんですけど…」
「…寮の話?」
「そうです」
「恨んでどうぞ。前から思ってたことだし。いいタイミングであのデザイナーがやらかしてくれたからな。説得力抜群だったな」
「本当酷い…」
「何か起こってからだと遅いんだよ。寮でお前になにかあって、それがばれたら管理会社はもちろん学園にも迷惑がかかって大問題になる」
「それはそれで仕方ない」
「馬鹿!!」
「…」
…
「そんなことが…お前にあってたまるかって言ってんだよ」
「…」
裸眼で視界はぼやけて良く見えないから先輩の顔もちゃんと見えない。
…
でも、声が怒ってる…?
なのに…前髪を撫でる手は温かくて…優しい…
だ、駄目だ…
ドキドキが止まらない…
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