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第72話

… … 「三階」 … 「三階、着いたぞ」 ン… あったかい… 「おーい」 … チュ… 「ん…」 チュ? !! 「…着いたぞ…」 「え」 目の、目の前に成谷先輩の顔!!! 美顔っ!!!近い!やっぱり近いし!! って…あ! 「………………ね、寝てた?」 「超寝てた」 「……つか今…キス…しませんでした?」 「お膝貸した手数料」 「…!」 しまったぁ…気がついたら寝ていたらしくて自宅の前だった。 …超寝てンじゃん…! あんなにあんなに怒っていたのに…まさか本当に先輩の膝まくらで寝てしまっただなんて…! 僕って馬鹿ぁぁぁ!!! って…!何でキスするんだよ…キスってそんな気軽にするもんだっけ? …あぁ… そうかこの先輩、気軽にキスできる人なんだったわ… 「す、すみません…本当に寝るなんて」 「寝ろって勧めたの俺だし。謝らなくていいよ」 「で、でも僕…部屋の件…許してないですからっ!」 「はいはい」 起き上がり眼鏡をかけながら先輩をチラ見する。 あのデザイナーの新作の服を着て長い脚を組み僕を見つめる成谷先輩はカッコ良くて優雅だ。 あの膝をまくらに寝てただなんて…そしてキスまで…色んな人に申し訳なくなってくる。 「お、お送ってくださって有難うございました」 「いいえ」 … 「あ、あの…」 「…?」 「先輩の膝…寝心地…良かった…です」 「……それはどうも」 「すみません。じゃ、失礼します」 「じゃぁな」 うちの家政婦に甘い笑顔で挨拶し車は出発した。 … 立ち去る車を見送ってから自宅へと入る。 「お風呂入るー」 そう一言呟いてバスルームへと向かった。 … 今日はなんていう日なんだ… バズルームで一人へなへなとしゃがみ込み深いため息をついた。 「うあああぁ…」 …やっぱり…好きだぁ… 成谷先輩はただからかってるんだろうけど、そんな気軽にキスとか…しないで欲しい… 胸にも…された…… はぁ… 今日…やっぱり行かなければ良かった… 身も心も限界…

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