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第74話 あぁ…夏休み終わる

   それから楽しい楽しい夏休みは一日一日と削られてしまい、 寮へと戻る日になってしまった。 あぁ… 1階の僕の部屋はもぬけの殻で、すべて12階へと移動させられてしまったのだ。 … … 何もなくなった元の部屋の前に佇みぼーっと見つめた。 …気に入っていた庭も庭いじりもできない。 夏休み中本気でやめてやろうかと思った。 夏休み明けからサボってやるぜぇ!っとも考えた。 兄さんのオーダーメイドのスーツのポケットに泥団子を作って詰めてやった。 …ふ…キレてたな… あの忌々しいデザイナーは今回の件がバレてうちとの契約を破棄されたようだ。 当然の罰だね!!! あそこの服はもう一生着ないんだからな!!! あーー!! 思い返しても頭にくる!! 「千歳…何してんの?」 「あ」 そんなことがあったのに頑張って夏休み明けから学校にこれた理由は… 「おはよう!久しぶり!」 「幸…おはよう…」 横溝幸がいるからに他ならない。 久しぶりの再会に思わずお互い抱きしめあった。 「もう夏休み全然連絡くれないんだから。連絡来たと思ったら俺海外だったししかも凄い落ち込んでたし!びっくりしたよ」 「ごめん…折角の海外旅行満喫してて楽しんでいたのに水差して…」 「全然!連絡くれて嬉しかった!何か夏休み凄いことあったね。ついでに部屋まで変わってるなんて」 「うん…幸…マジ僕…ぐれそうだよ」 「あはは、千歳がぐれるって想像つかない!でも前も話したけど結果上の階で良かったと思うし俺は嬉しいよ。だってこれからは俺の上の階にいるんだろう?遊びに行きやすい!気に入っているのはわかるけどやっぱりここは君には危険だよ」 「…うぅ…」 「工夫してさ、快適な部屋にしていけばいいじゃん?俺も協力するからさ!」 「うん…」 専用のエレベーターに乗って上階へ、11階で幸が手を振りながら降りる。 12階の最上階へ… 開放的なラウンジがあって各部屋はその両サイドに設けてある。僕の部屋はラウンジ向かって左側の奥の部屋だ。 … 抜き足差し足で忍びの様に部屋へ向かう。 最上階は個室4部屋しかない。 野宮先輩と香乃先輩と成谷先輩… で、僕。 … な、なんて恐ろしい階なんだ…! 左側の残りの一部屋の住人が香乃先輩なのが少しの救いだった。 「ミ カ イ !」 「わ!」 急に後ろから抱きしめられてびっくりしてしまった! 声で香乃先輩だとわかったけど! 「お、驚かさないでください!」 「あはは!よく来たね三階!最上階へようこそー!あー嬉しくてテンション上がるな!夏休み明けるのが楽しみで仕方なかったよ!」 わしわしと頭を撫でられながら香乃先輩は嬉しそうに喋る。 「太我から聞いた時は冗談かと思ったけど、夏休み何度かここに来たらさーマジで三階のお引越ししてて驚いたんだ!本当に本当だったねー!三階、よろしくな!」 「は、はい…よろしくお願いします…」 「あはは!納得いってないって感じ?」 「あ、いや…はい」 「ははは!正直だな」 ? 「あれ、香乃先輩…ほっぺたどうしたんですか?絆創膏貼ってますけど…」

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