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第75話
「あれ、香乃先輩…ほっぺたどうしたんですか?絆創膏貼ってますけど…」
香乃先輩の綺麗な顔には似合わない絆創膏がぺたりと頬に貼られていた。
「あーこれね。ちょっと昨日彼氏と喧嘩しちゃってさ…浮気浮気いうからムカついて殴ったら殴り返されてこのざまだよ」
「え、え…彼氏と喧嘩…?」
「…そう…浮気だなんてそんなことしてないのにねー嫉妬深くて嫌になるよね」
って言いながらも笑いながら嬉しそうに話している香乃先輩だけど…
「彼氏って…恋人ってことです…よね…」
「ん、そうだけど?おかしい?って…あぁ…ごめんな。俺付き合ってる奴いるから三階とは恋人になれないんだ…本当それが残念でならないんだけど…」
ぎゅぅ…
「…いや、あの!そんなの大丈夫ですっていうか間に合ってますんで!お気になさらず!」
「あっはは本当可愛いなぁ!何かあったら何かなくてもいつでも俺の事呼んで?飛んでいくから!」
「あ、あの…はい、有難うございます」
そう挨拶してやっと自分の部屋に入ることができた。
はぁ…びっくりした。
いきなり香乃先輩と会ってしまった。
彼氏…いたんだ!
彼氏ってことは相手は男ってことだよね!
殴って殴り返されたって…結構激しい喧嘩だったのかな。
あの香乃先輩からは想像つかない…
あ!
…そうだ、香乃先輩で驚いてちゃいけない!これからはここでは先輩3人と会うのが普通なんだ。
慣れないといけないんだけど、慣れない!
やっぱり緊張してしまう。野宮先輩はちょっと怖いし、
成谷先輩は…
…
ドドドドキドキしてくるから極力会いたくない。
そうなるとこのメンバーの中で一番の癒しは香乃先輩だ。
でも、でも全然慣れそうにないよー!
部屋に入り運び込まれた荷物を見渡す。
色々な観葉植物は昨日水を与えてから運んでもらったので、艶々生き生きとしていてそれを確認してホッとした。
…
香乃先輩や成谷先輩の部屋で一応間取りや大まかな広さはわかるけれど、キッチンやリビングルームがあったりと1階とは全く違う。
そもそも1階の部屋は相部屋なのを僕が一人で使っていたかたちだった。
…トイレもお風呂もついてるのは…まぁ…まぁ…いいかなぁ…
ベランダに出ると、暑い日差しが照り付けていた。
う、
日の光が下と全然違う!
でもこの日差しなら野菜作るのにいいかもしれない。うん。
…僕は食べないけど。
必要最低限のシンプルな家具とそれを上回る数の植物たち。
でも、
落ち着かなくて…
息苦しい…
はぁ……
ぎゅってしてもらえたらなぁ…
…
…
は?
誰に?
…!!!
あわわわ!
浮かんできた人物を慌てて脳内で消して、ベッドに思い切りダイブした。
昼寝!昼寝しよう!!!
寝てしまおう!!
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