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第78話 挨拶

次の日、学校が終わってから幸に言われた通り最上階フロアーの先輩方に挨拶しに行った。 香乃先輩には激しく抱きしめられ、 「眠れない夜は俺のところに来ていいからね?いつでもおいで」 なんて言われながらおでこにチュチュってキスをされた。 … 野宮先輩は、 「部屋が変わりまだ慣れないとは言え、学業も大事だぞ?なるべく学校も休まないようにして欲しい…けれど言ってすぐ直るようなものでもないことは良くわかっている。まぁ…成績を落とすようなことはしないことだ。わかったか?」 「は、はい、頑張ります…」 「わからない問題があればいつでも聞きに来なさい。あ、セクハラを受けたらすぐに成敗してやるからな」 大きな手にわしわしと髪を撫でられ、ぎゅうぎゅう抱きしめられたけど…これも…それに…入るんじゃ?ぐ、苦しい… … … そして成谷先輩にも挨拶…しなくちゃなんだけど、成谷先輩の部屋の前に立ったまま…まだチャイムを押すのに躊躇っていた。 …挨拶するだけ! (挨拶が遅れてすみません。よろしくお願いします) これだけっ!これだけっ!よし!よーし! … … でも僕まだ怒ってるから挨拶に少し怒りを含ませた方がいいかなぁ。 (挨拶が遅れました。とりあえずっ!よろしくお願いします…) … 怒ってること伝わるかな? (まだ怒ってますから!) って足して言った方が直球でわかりやすいかな? …相手は一つ上の先輩だけど、ここは自分の主張をきちんと伝えておかないといけないと思う。 また今後こういうことが起こったときに、同じようにあやふやに流されてしまうかもしれない。 うむ、あの時の怒りを忘れない為にも理解してもらう為にも! こちら側の意見はしっかり伝えようではないかっ!! よし!行くぞー! 千歳っ頑張れ!!! 「何してんの?」 「うわぁぁぁ!!?」 急に話しかけられて心臓が口から出そうになった! すぐ隣に制服姿の成谷先輩がカバンを下げて立っていたのだ。僕の叫び声に野宮先輩が何事かと飛び出して来た。 「三階どうした!…んあ、太我…?」 「あ、あああの…叫んですみません。な、なんでもないです…」 口を押さえながら動揺した心を落ち着かせようとするんだけど、どうにもこうにも上手くいかない。 「どうした三階?何かよう?」 「え、あ、あの!…」 「…」 「…ひ、引っ越して…来ました…」 「…知ってる…」 … 「ですよね…」 「…」 「…えと…じゃ」 「うどん」 「?」 「お前うどん食える?」 「うどんですか…食べれます…けど…」 「じゃぁ、ほら入って」 「え、え!?」 「腹減ってんだから早くしろ」 「は、はいっ」 バタン … … 「あ?なんだよ太我の奴、俺は完全無視かよ…俺もうどん好きなのに…」 その場に残された野宮先輩は一人寂しくぽつりと呟いた。

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